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代表 7年前

「モドリッチ世代」で挑む最後のW杯。新指揮官により進化を遂げたクロアチア【ロシアW杯出場全32チーム紹介】

シリーズ:ロシアW杯全32チーム紹介 text by 長束恭行 photo by Getty Images

20年ぶりの決勝トーナメントへ。期待されるコバチッチの役割

クロアチアフォーメーション
クロアチア代表の基本フォーメーション

目標:ベスト8
ノルマ:決勝トーナメント進出

 ユーゴスラビアからの独立以降、南アフリカ大会を除く全てのW杯に出場してきたクロアチアだが、グループリーグを突破したのは初出場のフランス大会のみ。与し易い相手と思った第3戦で崩れる傾向が強く(日韓大会…対エクアドル、ドイツ大会…対オーストラリア、ブラジル大会…対メキシコ)、最初の2試合に連勝して決勝トーナメント進出を決めるのが理想だ。

 しかし、ナイジェリア、アルゼンチンと初戦から難敵が続き、第3戦までもつれた場合、予選で苦杯を味わったアイスランドが待ち構えている。移動距離が長いのも懸念材料の一つとなる。

 ダリッチ監督は「我々の目標はグループリーグ突破」との発言を繰り返し、シュケル会長も「最困難なグループだ」と謙虚に語るだけに、代表に課せられるノルマもベスト16だ。しかし、代表がもたらす収入に頼りっぱなしの協会としては、可能な限り勝ち進んで欲しいというのが本音のところだろう。

 これまで協会の幹部は、代表で得た莫大な収益を国内のサッカー振興に還元しようとしなかった。スタジアムは廃墟同然で、経営破綻に陥る地方クラブも続出。初のナショナルトレセンの建設計画もシュケルやマミッチらが利益誘導を図ったことで棚上げになった。このほど協会内の経費の水増しや外部協力者への不透明な金銭の流れも発覚し、「奴らはマフィアだ」と国民の怒りが極限に達している。

 そんな中、腐敗したサッカー界の健全化と再建を目指そうと、98年組のダリオ・シミッチが対立候補として立ち上がった。給与未払で苦しむ国内リーグの選手を救済すべくクロアチア選手会を立ち上げ、初代会長も務める彼は、代表OBのマリオ・スタニッチ、ゴラン・ヴラオビッチ、スティペ・プレティコサと一緒に改革プランを携えて国内中を駆けずり回った。

 シミッチは各種メディアのアンケートで90%前後の圧倒的な支持を得ていたが、シュケルは「会長立候補には21ある地方協会のうち9つの支持が必要」という内規を壁にすべく、会長選の日程を前倒した上、地方協会に政治的な根回しを忘れなかった。時間切れのシミッチは立候補すらできず、12月22日にシュケルの会長再選が決まってしまった。

 黙っていないのはサポーターだ。協会打倒には手段を選ばない過激派がロシアの地でトラブルを引き起こす可能性は高く、またして選手たちの集中が削がれてしまうだろう。代表マネーに巣食う一部の人間が私服を肥やすばかりで、タレントの源泉を枯渇させつつあるクロアチアは、間違いなく長い後退期に突入する。こんな母国の惨状を憂う選手たちにとって、ロシア大会が20年前の栄光を再現するラストチャンスだと認識しているはずだ。

 ピッチ外の話題が中心になってしまったが、最後に注目選手を一人挙げようと思う。ネクスト・モドリッチとして将来のクロアチア、そしてレアル・マドリーを支えるだろうコヴァチッチだ。36分の出場時間しか得られなかったEURO2016の後、バカンスを早めに切り上げてレアルのキャンプに合流。巨大なポテンシャルを制御できずに苦しんだ彼は、あの失意をきっかけに大きく成長した。

 今季のスーペル・コパではメッシを封じたようにディフェンス面の向上は特に目を見張る。先日のクラシコではメッシ番を逆手に取られ、ラキティッチのドリブルを許して失点を招いたものの、今の彼ならあの失敗をバネにすることだろう。奇しくも第2戦の相手はアルゼンチン。怪我もあってチーム内の序列は決して高くないが、高速ドリブルという飛び道具を戦術に上手く組み込み、モドリッチやラキティッチとも調和が取れるようならば、今大会最強の中盤トリオとして記憶に留まるはずだ。

(文:長束恭行)

【了】

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