前線に豊富な人材。主軸はやはりモドリッチ
【クロアチア代表】
FIFAランキング:17位(2017年12月)
監督:ズラトコ・ダリッチ(2017年11月~)
2大会連続5回目の出場
最高成績:3位(1998年フランス大会)
欧州予選グループI 2位通過
欧州予選PO対ギリシャ戦4-1(2戦合計)
人口430万人の小国ながら、メガクラブのタレントが凝縮するクロアチア。キャプテンの名を取り「モドリッチ世代」と呼ばれる現主力は、1998年のフランス大会で3位に輝いた世代と常に比較されながらも、本大会になると結果を残せず終わっていた。30歳前後になった彼らにとって、ロシア大会は最後のW杯になるだろう。これまで足を引っ張り続けたのは、皮肉にも20年前のW杯得点王ダヴォル・シュケルだ。
クロアチア・サッカー界の黒幕、ズドラヴコ・マミッチの支援を得て、2012年にサッカー協会会長に就任したシュケルは、指導経験の浅いイゴール・シュティマッツやニコ・コヴァチ、カリスマや戦略性の欠片もないアンテ・チャチッチのような、選手たちの能力と不釣り合いな人物を代表監督に据えてきた。シュケル会長は協会の予算で一年のほとんどを外遊に当てる一方、マネー優先で強化に繋がるマッチメイクをせず、試合会場を巡っては地方の怒りを買い、協会を敵視するサポーターを「フーリガン」として煽り続けた。
無観客試合やサポーターの抗議活動が繰り返され、代表戦で一時帰国中のルカ・モドリッチ(レアル・マドリー)やデヤン・ロヴレン(リバプール)がマミッチの汚職裁判で証言台に立たされるなど、チーム内外に漂う空気は最悪。予選終盤の大失速を招いたチャチッチ監督の解任判断が土壇場となり、最終戦のウクライナに敵地で勝たねば予選敗退という瀬戸際に追い詰められた。
藁をも掴む思いで一試合限定の監督を依頼したのが、フリーだったズラトコ・ダリッチ。彼は2日間の準備しかない中、沈鬱な表情の選手たちを奮い立たせ、(前任者にはその能力が皆無だった)戦況に応じた修正力で勝利を手繰り寄せた。その直後にカルロ・アンチェロッティ招聘の噂が流れたが、国民の圧倒的支持を得たダリッチは苦手なギリシャとのプレーオフも制し、シュケル会長からようやく本契約を勝ち取った。
アル・アインでのACL準優勝を筆頭に、もっぱらアジアで業績を残したダリッチ監督だが、2006年から2011年までU-21代表コーチを兼任した経験から、現有戦力の特徴を把握しているのが強み。攻撃サッカーを信奉する彼が手を加えたのは、適正ポジションを選手たちに割り振ることだ。中盤から前線にかけて他国が羨むほどの実力者を抱えるクロアチアだが、それぞれの特徴を最大限に引き出せるようチーム設計した監督は近年いなかった。
ダリッチ監督は「4-2-3-1」のフォーメーションはそのままに、モドリッチとイヴァン・ラキティッチ(バルセロナ)の縦の関係を入れ替えた。トップ下のモドリッチは水を得た魚のように自在にチャンスメイクし、ラキティッチは「水を運ぶ人」に徹することでボールの流れがスムーズに。もう一枚のセンターには、バランサーのミラン・バデリ(フィオレンティーナ)、ボックス・トゥ・ボックスのマルセロ・ブロゾヴィッチ(インテル)、ドリブラーのマテオ・コバチッチ(レアル・マドリー)を使い分ける。
FW陣も多士済済だ。ワントップはマリオ・マンジュキッチ(ユベントス)が第一選択肢だが、ユベントスのスタイルを移植させることで、ニコラ・カリニッチ(ミラン)やアンドレイ・クラマリッチ(ホッフェンハイム)を併用できる。ウクライナ戦では後半にマンジュキッチとポジションチェンジしたクラマリッチが2ゴールと爆発。本職のウィンガーにはパワフルな突破が持ち味のイヴァン・ペリシッチ(インテル)が君臨し、怪我から復帰のマルコ・ピアツァ(ユベントス)も控えている。
一方で不安を抱えるのが守備陣だ。DFリーダーのヴェドラン・チョルルカ(ロコモティフ・モスクワ)は右足アキレス腱断裂で長期離脱。ロヴレンはリバプールだけでなく代表でもポカ癖を露呈している。もっとも深刻なのは、長年の懸案事項である左SB。前監督の寵愛を受けたヨシップ・ピヴァリッチ(ディナモ・キエフ)は失点に繋がるミスを連発したため、ダリッチ監督はウクライナ戦で右SBのシーメ・ヴルサリコ(アトレティコ・マドリー)を一時的にコンバートさせ、プレーオフでイヴァン・ストゥリニッチ(サンプドリア)を代表復帰させた。EURO2016のポルトガル戦で戦犯とされたストゥリニッチは名誉挽回とばかり奮闘したものの、本大会となるとやはり心許ない。