「熱があった」という長友。情状酌量の余地はあるが…
リーグ戦8試合ぶりに出場した長友佑都【写真:Getty Images】
フィオレンティーナが猛攻を続け、アディショナルタイムに突入。彼らがエリア内でボールを細かく回す中、サントンがインターセプトを狙ってボールホルダーに詰め寄る。だがその間に、マークしていたジョバンニ・シメオネをフリーにするというミスを犯してしまう。そしてパスが回り、シュートが決まる。手痛い失点だった。
その攻撃も元を辿れば、キエーザのサイドアタックから始まっていた流れだった。その際に長友は丁寧にコースを切り、キエーザに突破を許さずバックパスへと逃させているから、彼が失点に絡んだという言い方はできない。ただフィオレンティーナが、キエーザを軸に攻め立てていたのは事実だ。
試合後、スパレッティ監督自身は長友を擁護している。「彼はこの週のあいだ風邪をひいていた。1対1で抜かれていたのも、今日も熱があったからだ」と地元テレビのインタビューの中でフォロー。そして、戦術的な観点で苦戦の原因を別のところに求めていた。「我われにはボールを管理するという意識が全くなかった。例えば長友のいたところを見るといい。あのサイドで2度、我々はボールを相手に刈り取られた。そして(長友は)1対1での対応を強いられるわけだが、あそこは複数でスペースを閉めなければならないところだった」
さらに記者会見場に現れたスパレッティ監督は「質が必要だ」と熱弁した。「この8年間、我われは1シーズン平均で41失点をしている。CLに行きたいチームがこれではダメだ。それも守備は守備、攻撃は攻撃と人任せにするからまずいのだ。人の仕事も少しずつフォローしながら、ボールを奪うのだ。ところが今の我われは、一度ボールを失うと、それを奪い返しに戻らない。こんなのでどこに行こうというのか!?」
今季の前半戦でのインテルは集団で守備のできるチームに変貌を遂げていたという印象があったが、今それが崩れているのは確かに事実。長友だけではない。サントンやカンセロも、またダウベルトも、この日は前の選手からろくなフォローも受けず、1対1で振り回されることが多かった。インテルが立て直すべきは、不用意なボールロストの多い組み立てと、集団としての守備意識にありそうだ。
もっとも、サイドで数的不利をさらされるような場面であっても、ピンチを切り抜けられる「質」はチームの勝利のために求められるものだ。監督の言う通り熱を抱えて、ということであれば、長友のパフォーマンスにも情状酌量の余地はあるだろう。だがやはり彼は、サイドで突っ込んでくる相手の攻撃を止めてなんぼの選手。そこに一層の信頼を託してもらえるよう、さらなる奮起と質の向上を期待したい。
(取材・文:神尾光臣【ミラノ】)
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