第96回全国高校サッカー選手権大会の準々決勝が5日に行われ、千葉県代表の流通経済大柏が長崎県代表の長崎総科大附属に3-0で勝利を収めて3年ぶりのベスト4進出を果たした。
前半は互いに煮え切らない展開だったが、後半開始早々に大きく流れが変わった。ロングスローの流れから流通経済大柏のDF関川郁万が豪快なシュートを突き刺し、均衡を破る先制点を奪った。
2年生ながら流通経済大柏の守備陣を力強く支える関川は試合後「気づいた時にはもうゴールに刺さっていた感じだったので、本当に嬉しかったです」と、選手権初ゴールの喜びを語った。味方が同時にシュート体勢に入ったものの、自ら「どけ!」と押しのけて奪った待望の1点だった。
関川にはセンターバックとして掲げる「1人で守って、自分が点を決めて勝つ」というこだわりがある。ゴールを自分の力で守り、自分で試合を決められれば最高の評価を得られると考えているようだ。しかし、今大会はまだゴールがなかった。
本人が「インターハイのように簡単にはいかない」と語っていた通り、ハットトリックを含む計4得点を挙げて流通経済大柏の優勝に貢献した夏のインターハイとは状況が違う。選手権前は10月ごろから失点続きで、元々のチームの持ち味である「堅守」を取り戻すために意識を注ぐ必要があった。
夏に元日本代表DFの岩政大樹や秋田豊氏に学んだことも、関川の成長を助けた。「自分は全然考えるタイプではなくて、対人だけでやっていた」ところから、「対人の部分よりも頭で考える、守備のビジョンは少し自分の中で変わったかなと思う」と守備者としての変化を実感している。
「1回やられたら自分発信で『こうしよう、ああしよう』とできるようになったは、岩政さんのおかげかなと思います」
U-17日本代表候補にも選ばれるなど実力面ではこれまでも高い評価を得てきた関川。いまでは流通経済大柏守備陣の柱として、今大会無失点のチームを引っ張っている。「ディフェンスラインとして個人的に無失点というのは最高の言葉なので、(無失点優勝も)狙います」と、強気な姿勢も不変だ。
もともと大舞台になるほど燃えるタイプでもある関川は以前、「いろんなお客さんが来ている中、自分のプレーを披露するのは楽しかった」と初めての選手権の舞台に興奮していた。準決勝からは埼玉スタジアムでの開催になり、より多くの観客の前で自らのパワーを発揮できる最高のシチュエーションが整っている。
「個人的にはやっぱりヘディングで決めたかったので、次の矢板中央戦は頭で決めたいな」
無失点も自身のゴールも貪欲に追い求めるファイターは、初めての選手権で「1人で守って、自分が点を決めて勝つ」という理想の姿に一歩ずつ近づいている。
(取材・文:舩木渉)
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