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天皇杯で躍進、いわきFCを作った2人の男。投資価値が見出されたクラブのあり方【いわきFCの果てなき夢】

シリーズ:いわきFCの果てなき夢 text by 藤江直人 photo by Editorial Staff

投資という感覚のなかでのトライ

 安田が約束を果たそうと動き出している以上、自分も守らないわけにはいかない。繰り返された自問自答の答えは、「一度Jリーグから身を引き、俯瞰してスポーツ界を見る」と弾き出された。2015シーズンの年間総合順位で8位と大躍進し、クラブ史上初のJ1残留を果たしたことを受けて大倉は退社を決意した。

 2012年6月に立ち上げられ、活動を続けてきたいわきFCを運営する「一般社団法人いわきスポーツクラブ」から、ドームが子会社として設立した「株式会社いわきスポーツクラブ」が運営権を譲り受けた2015年12月。大倉は「株式会社いわきスポーツクラブ」の代表取締役に就任した。

「いまでは安田から『お前にだまされた』とよく冗談を言われますけど、このクラブハウスから生まれる価値が本当にたくさんある。ファシリティーが我々のブランド価値を上げ、地域と一体化することで地域のブランド価値も上がるサイクルからお金が生まれ、それらが税金として市に還元される。

 そういう流れをわかっているから、安田もあれだけのお金を投資する。そのダイナミズムさは本当にすごいし、投資という感覚も僕のなかでフィットするし、新しいトライを楽しませてもらっている。安田は早くも『価値が上がれば上がるほど、もっと投資しなければ』と言っているくらいですから」

 今夏のユニバーシアード台北大会を制した日本代表など、いわきFCフィールドにさまざまなサッカーチームの合宿が誘致される機会も飛躍的に増えた。そうした状況を受けて、土地をさらに購入したうえで、サッカーコートをもう1面作る、あるいは宿泊可能な施設を建てるといった新たな青写真が、行政も参加するかたちですでに描かれ始めている。

(文中敬称略)

(取材・文:藤江直人)

【了】

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