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天皇杯で躍進、いわきFCを作った2人の男。投資価値が見出されたクラブのあり方【いわきFCの果てなき夢】

シリーズ:いわきFCの果てなき夢 text by 藤江直人 photo by Editorial Staff

日本スポーツ界初の商業施設複合型クラブハウスをオープン

人工芝のサッカーコートとフットサルコートが整備された「いわきFCフィールド」
人工芝のサッカーコートとフットサルコートが整備された「いわきFCフィールド」【写真:編集部】

 ドームが購入した敷地内には、盛り土になっている広大な部分もあった。その用途について、スポーツをこよなく愛する安田は壮大な夢を明かした。

「ここにグラウンドとサッカーチームを作ったらどうなるかな」

「そんなに簡単な話じゃないから」

 最初はこんなやり取りで終わったが、安田はこう切り出してきた。

「やっぱりサッカーチームを作ろう。お前が社長をやれよ」

 大倉の肩書には2015年4月から、新たに「代表取締役」が加わっていた。ベルマーレのフロントに入って11年目。決して順風満帆ではなく、チームを再建したという経験をもとに「行政の壁というものもあるし、日本では本当に大変だよ」と話した。

「それでも『何が大変なのか』と言うから、僕がベルマーレで感じてきたことを洗いざらしに伝えました。たとえばクラブハウスを作るのにも10年かかったとか、収入のほとんどは選手への年俸となるとか、クラブスタッフにはそんなに多く支払えないとか、ファシリティーへの投資もできないとか。

 そのうちに『お前、ファシリティーをここに作れるのか。グラウンドや将来のスタジアムはどうするのか』となって。安田の思いもわかっていたし、お互いに通じるものもあったので『そうしたら安田が『作る』と言ったんです」

 盛り土の部分は人工芝のサッカーコート1面とフットサルコート2面が整備され、屋根がついた400人収容の観客席と照明も設置された『いわきFCフィールド』として2016年11月に開場。土地を所有していた企業の建物はリノベーションされ、鉄筋3階建ての日本スポーツ界初の商業施設複合型クラブハウス『いわきFCパーク』として今年7月に全面オープンした。

 アンダーアーマーのアウトレットショップや輸入車販売店、いわきFCのアカデミーのロッカールームが1階に、いわきFCトップチームのロッカールームや英会話教室、ドームが経営するジムが2階に、5軒の飲食店が3階に入居しているクラブハウスは、豪華さだけでなくクラブチームが不動産ビジネスを展開している点でも、既存のJクラブのそれと明らかに一線を画す。

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