柏への移籍が決まって「裏切り者」と呼ばれた
（合併撤回の）署名活動はオレもやっていた。たくさんの人が署名してくれたけど、中には「知らねえよ、そんなの」なんて言われて、その時はムカついたけど、まあいろんな人がいるからね。
ただ、オレはわりと冷静に見るほうだったから「これは厳しいだろうな」って思っていた。それもあって、天皇杯の前には（柏）レイソルへの移籍を決めていたんだよね。
サポーターの中には「裏切り者！」って言っている人がいることは、オレも聞いている。もちろん、「ここで諦めちゃダメだ！」っていうサポーターの考え方も、理解できないわけではないけどね。オレだって、フリューゲルスで長くやっていたわけだし。
アツとか永井（秀樹）とか吉田さんとか、マリノスに行くことになった選手にも「ライバルチームに行くのか！」って非難する人もいたみたい。だけど、それはサポーターの考えであって、オレらは選手としてできるだけ長くやっていきたいわけだから。
それにオレ自身も生活はあるし、レイソルに行ったからって、レギュラーが保証されているわけではなかったし。ただそれ以上に、「次が決まらずモヤモヤしたまま天皇杯を戦いたくない」っていう気持ちのほうが強かったよね。「絶対に決勝まで行ってやる」って思っていたし。
これは裏話なんだけど、会社から「選手とスタッフに引越し代を出す」って話があった時に「だったら天皇杯で1試合勝つごとに勝利給を出してくれ」って言ったの。オレらはサッカーでカネを稼いでいるからね。それに5試合に勝てば天皇杯に優勝できるし、それなりの金額を選手とスタッフに残すことができる。だったら、優勝するしかないよね（笑）。
＜後編につづく。文中敬称略＞
（取材・文：宇都宮徹壱）
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