モロッコ守備陣の中心、ベナティア
目標:決勝トーナメント
ノルマ:1勝
欧州王者ポルトガル、前々回の王者スペインと同じ組に入ってしまい、下馬評の構図としてはイランとともに“二弱”となることは否めない。ただ、ベナティアを中心としたディフェンスさえ崩れなければ、接戦に持ち込み“二強”の一角を崩すチャンスは必ず出てくるはずだ。
そのベナティア、相棒のサイスに大型SBのディラール、長身FWブタイブを加えたセットプレーの守備は失点のリスクが少なく、守護神モハマディもミドルシュートや直接FKには滅法強い。サイドからのクロスはベナティアとサイスがほぼ完璧に跳ね返すことができるため、中盤の守備がカギを握りそうだ。攻撃面はパスワークを軸とした基本スタイルは崩すことなく、ただアフリカ予選ではあまり必要の無かったカウンター、セットプレーからの得点力も磨いて臨みたい。
キャプテンそして守備の要を任されるベナティアはかつての英雄ナイベトの系譜を次ぐ強さと巧さを兼ね備えたアフリカ屈指のCBであり、ローマ、バイエルン、ユベントスで培った経験も代表の舞台で大いに発揮されている。この重鎮が率先して規律を守り、ルナール監督の要求に応えることで、ベテランから若手までチームの一体感を実現している。それだけに彼が万全のコンディションで本大会に臨むことが躍進の絶対的な条件と言えるかもしれない。
レアル・マドリーでも注目の若手の1人であるハキミはクラブで右SBを担うが、代表では左サイドを根城に幅広く攻守に絡む役割を果たしている。とりわけビルドアップの質を大きく高めており、“格上”のスペインやポルトガルが相手でも彼を起点としたサイドアタックが決定的なチャンスにつながる期待は小さくない。攻撃のキーマンである左ウィングのジイェフが活躍できるかどうかも19歳のサポートがカギを握っているかもしれない。
攻撃陣で大化けの可能性があるのはサウサンプトン所属の24歳FWソフィアンヌ・ブファルとシャルケに所属する20歳のアミンヌ・アリットだ。ブファルはアフリカ予選で2試合しか招集されていないが、ジイェフに勝るとも劣らない個の打開力を秘めており、スタメンとしての大抜擢の可能性に加え、終盤で勝負を決定付けるジョーカーになりうる。フランスの年代別代表で主力だったアミットは予選の終盤に初招集された選手で、残り半年でフィットすれば“秘密兵器”となりそうだ。
(文:河治良幸)
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