攻撃力上乗せを試みたサイドバック変更は守備面で裏目に
ルチャーノ・スパレッティ監督の選択は奏効せず【写真:Getty Images】
もっとも相手が守備を固めてくることを読んでか、ルチャーノ・スパレッティ監督も攻撃力の上乗せをなんとか考えようとしていた節はあった。それがジョアン・カンセロの右サイドバック起用だ。攻撃センスは抜群で、単独でもドリブルで相手を抜いて敵陣まで持っていける彼を試した。当然のこと守備とのバランスは取らなければならず、最終ラインの面々を一気に入れ替えるわけにもいかないから、ダニーロ・ダンブロージオを左サイドバックに回したというわけだ。
ただこれは、裏腹な結果を招いたという印象が否めなかった。カンセロの起用は攻撃面では奏功し、イカルディのPKは彼のクロスが招いたものだ。だがいかんせん、守備では穴を開けてしまうこともしばしば。一方で左のダンブロージオといえば、ペリシッチを縦に走らせるパスが出てこない。普段なら右でカンドレーバとポジションを入れ替えながら豪快に攻めていくのだが、左では同じようにいかなかった。
そしてこの試合の決勝弾は、DFラインをいじったことが裏目に出た形となった。33分、カウンターからポリターノがインテルの左サイドをするっと抜けてドリブルで50mほど突破をする。左サイドバックのカバーが間に合わなくても、普段なら適宜MFのカバーが入り、その間にDFラインはさっと整備を図る。ところがこのシーンではまるで距離感がバラバラ。サッスオーロのセンターフォワードであるディエゴ・ファルチネッリがエリアの中で体も寄せられずフリーになっているという、これまででは信じられないことが起きていた。
そこにクロスが通り、エリアの中にいたミラン・シュクリニアルやカンセロも、ファルチネッリに体を寄せきれずヘディングシュートを決められてしまった。
次節は、前線のタレントを活かしてカウンターに滅法強いラツィオと対戦する。5位の彼らに敗れ勝ち点差を詰められれば、首位は争いはおろか4位以内の入賞でCL出場圏確保という目標すら危機にさらされる。試合を追うごとに相手の対策が進む中でチームの立て直しが効くかどうか、インテルにとっては踏ん張りどころである。
なおサッスオーロ戦ではダンブロージオが左膝を故障。執筆時点で検査は行われていないが、現地では重症であることも危惧されている。これまで守備の安定を担ってきた彼がもし複数の試合で離脱するということになれば、さらに手痛いことになる。長友佑都はサッスオーロ戦でもベンチに回されていたが、出番が来た時には堅実な守備をチームに保証できるかが求められる。
(取材・文:神尾光臣【イタリア】)
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