愛弟子デゲネクが語る「父親のような」アンジの本質
このシステム変更が、最終予選最終盤での停滞を招いたとして、一部のメディアやサポーターからの激しい批判が巻き起きる。それが、ポスタコグルーの中で大きな葛藤を引き起こし、やがて後のサプライズ辞任の遠因となる。
そのような様々な試練を乗り越えて、シリアとのアジア予選プレーオフ、ホンジュラスとの大陸間プレーオフを何とか勝ち抜いた豪州が何とかロシアへの切符を掴んだのは、11月も既に中盤に差し掛かっていた頃。そして、精魂尽き果てたポスタコグルーは熟慮の末、代表監督を辞任する。それから約1ヶ月で今回の横浜FM監督就任と、彼をめぐる情勢は年の瀬が迫ってから目まぐるしく動いた。
伝え聞くところによれば、今回の交渉でのポスタコグルーは「クラブとして優勝を目指すのか?」という質問を横浜FMに対してのっけからぶつけたらしい。これこそ、ポスタコグルーという男の真骨頂だ。彼は、高いが達成可能な目標設定をして、そこに向けて様々なものを積み上げていく。そういう作業を意外に地味にこなしていくタイプの監督である。
横浜FMがポスタコグルーを次期監督に指名した大きな要素のひとつに、現役豪州代表DFミロシュ・デゲネクの存在があることは疑いようがない。彼が、自らを代表へと導いてくれたポスタコグルー監督就任を聞いて発したコメントを入手したが、素直な感情と共に監督のキャラクターをよく表わしていて実に興味深い。
「とてもエキサイティングだ。大きな変革が起きて、クラブも、選手も、大きく前進するに違いない。(ポスタコグルー監督は)とてもプロフェッショナルで、すごく前向き。ターゲットに対しての思いをストレートに伝えることができる人。(代表監督としては)父親のような存在の素晴らしい監督で、試合中も常にピッチのすぐ横に立つ熱いモチベータータイプの監督だ」
ポスタコグルーの人となりや監督としてのアプローチは、ほとんどこのデゲネクのコメントに表れている。あえてひとつ付け加えれば、良くも悪くも「頑固」。これと思えば、突き通すそういう強い意志がある。そのあたりをうまく伝える立場の選手が、愛弟子のデゲネクということになる。だが、監督のフィロソフィを英語を解さない選手やスタッフにきちんと落とし込めるかという意味では、通訳などのバックアップ体制が担う役割も大きくなる。