決勝トーナメント進出が現実的な目標に
目標:決勝トーナメント進出
ノルマ:決勝トーナメント進出
ロシアW杯では、開催国としての面目を保つためにも最低限のノルマは「ベスト16」となる。しかし、いまのロシア代表にこの壁を超えられる実力があるとは言えない。自国開催のプレッシャーもある。目標はベスト16の一つ上、「ベスト8」に置くべきだが、決勝トーナメントに進出できるだけでも上出来ではないだろうか。
チェルチェソフ監督はW杯に向けて3バックの熟成を進めているが、ポジションごとの序列が明確でなく、コンフェデレーションズ杯では4バックも試すなど、まだ本番に向けた布陣とメンバー選考に頭を悩ませているようだ。来年3月にはブラジル代表との親善試合が予定されており、そこがターニングポイントになるかもしれない。
守備陣ではヴィクトル・バシンがリーダーシップを発揮できるかがW杯本大会での出来を左右する。ロシア代表デビューは2010年と早いが、所属するCSKAモスクワでもベレズツキ兄弟やイグナシェビッチの壁に阻まれて大成しきれていなかった29歳は、ここにきてようやくクラブと代表の両方で主力に定着した。経験不足は否めないが、ディフェンスリーダーとして最終ラインを引っ張る責任は大きい。
攻撃陣での注目はヒョードル・スモロフとアレクサンドル・ココリン、2人のストライカーだろう。前者は1990年生まれの27歳、後者は1991年生まれの26歳と同世代で、ともにピッチ外の素行に問題を抱えて成長速度が鈍化していた“有望株”が、ついに覚醒の気配を見せはじめている。
決してビッグクラブではないFCクラスノダール所属のスモロフは今季のリーグ戦で13試合10ゴールを記録してレアル・マドリーから関心を寄せられるまでになった。かつてアーセナルなども獲得に興味を示したココリンも、ゼニトでリーグ戦19試合10ゴールとキャリアハイの成績を残している。
中盤では左のジルコフと右のアレクサンドル・サメドフが安定感抜群のプレーを披露して両サイドを支える。若い頃から創造性溢れるファンタジスタとして脚光を浴びながら、度重なる負傷で停滞していたアラン・ジャゴエフも27歳になって徐々に復活の兆しを見せており、W杯本大会では攻撃のカギになるかもしれない。
今年は日本が11月に敗れたベルギーを始め、強豪のスペインやチリと親善試合で引き分けるなど、徐々に力をつけているようにも見えるロシア代表。自国開催のW杯でプライドを示し、ノルマを達成するには残された短い時間でタレント不足を補うだけの組織力を熟成し、チームの総合力を底上げすることが不可欠だ。
(文:舩木渉)
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