日本は最後までベンチの呪縛から解放されず
公式戦においては、選手交代は3人まで。いざキックオフの笛が鳴り響き、想定した展開とは異なる光景が目の前に広がったとしても、選ばれた11人の臨機応変な判断でプレーしなければ道は開けない。いい意味での自由奔放さが、サッカーというスポーツの最大の魅力のはずだ。
しかし、韓国と戦った日本は最後までベンチの呪縛から解放されなかった。早々にリードを奪ったのであればあえてボールを保持し、韓国を誘き出す戦い方を選択することもできた。ハリルホジッチ監督は怒るかもしれないが、勝った者がすべてを肯定する世界であることを忘れてはいけない。
特定の選手に責任を帰結させるつもりはない。それでも、頭の片隅では自由に戦おうと思いながら、最後の決断をくだせなかった選手たちのナイーブな本音は、左サイドバックとしてフル出場した車屋紳太郎(フロンターレ)の、自らを含めたチーム全体を責めた言葉に凝縮されていると言っていい。
「監督の言うことに従うのは大事だけど、自分たちで場面、場面に合わせて、ボールを保持するところは保持して、という判断も大事だった。僕としてはボールを保持できたと思っているし、そこは選手たちの勇気の部分だと思う。相手を怖がってボールを蹴ると、五分五分のボールになってしまうので」
国内組にとって、ロシアの地に臨むメンバーに生き残るための最後のオーディションと位置づけられた今大会。GK中村航輔(レイソル)や伊東、小林らをはじめ、北朝鮮、中国に連勝してポイントを積み重ねた選手たちの存在もすべて開幕前の段階に戻ったと言ってもいい。
終わってみれば、常日頃から厳しい環境でプレーしている海外組の評価が相対的に上がったことだけが収穫ではあまりにも寂しい。それを導いたのが、保身を強調したとも映る指揮官と、勇気に欠けたピッチから放たれる“熱さ”が足りなかったのならば、なおさら後味の悪さだけが残る。
(取材・文:藤江直人)
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