クラブW杯の優勝トロフィー【写真:Getty Images】
UAEにて開催されていたFIFAクラブ・ワールドカップ(W杯)はレアル・マドリーの優勝で16日幕を閉じた。同大会は来年再びUAE開催だが、再来年の開催地はまだ決まっていない。
クラブW杯は2014年にトヨタが冠スポンサーから撤退。翌年から中国の阿里巴巴集団(アリババグループ、Alibaba E-Auto)がオフィシャルスポンサーとなっていた。そのためUAE開催が終われば中国開催となるとの見方が強かった。
だが、大会関係者は「まだ分からない。決まっていない」と語る。FIFAの複数のスタッフも「未定だ」と口を揃える。開催まであと2年しかない状況で開催国が決定していない異例の事態となっている。
問題はホスピタリティだ。クラブW杯は7ヶ国のクラブが出場。選手・スタッフ・ファンなど多くの人が訪れ、また多様な文化に対応しなければならず、細やかな「おもてなし」が必要だ。中国はその点で未知の部分が大きい。これだけの規模の大会だと行政との折衝も必須で、開催都市の選定で難航している可能性もある。
FIFAはクラブW杯をW杯に次ぐイベントにしたい意向がある。そのためには大会全体の盛り上がりや熱狂が不可欠。UAE開催でもスタジアムが閑散としている試合もあり、それらは真っ先に解決すべき問題だが、英語が通じず融通がききにくい中国で果たしてファンが満足して足を運ぶような興行となるのか疑問視されているのだ。
その点、日本はトヨタカップ時代から開催実績があり、リスクが少ない。いざとなったら日本で、というのは無難な安全策として常にある状態だ。
クラブW杯は優勝しても賞金は約5.5億円。一方、欧州サッカー連盟(UEFA)が主催する欧州チャンピオンズリーグ(CL)は出場するだけで20億円以上を各クラブが手にしている。FIFAとしてはUEFAとの綱引きを続けるなかで、差を縮めていきたい。だからこそ、大会の盛り上がりに直結するホスピタリティを重要視している。
中国側は自国開催を見越してスポンサーとなっている。当然、ここで経験を積んで将来はW杯本大会の招致につなげたい。自国開催は中国からの強い希望だが、FIFAの基準をクリアする準備ができるかどうかが鍵となってくる。
果たして、2年後のクラブW杯は予想通り中国開催なのか、それとも日本へ戻ってくるのか。いずれにせよファンを軽視する大会だけにはなってほしくない。
(取材・文:植田路生【アブダビ】)
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