W杯メンバー滑り込みには、半年間でよっぽどのインパクトが必要
中盤3枚もこの日は及第点を与えられなかった。国際経験豊富な今野も、今年の代表戦11試合出場2得点の井手口陽介(G大阪)も修正力を示せなかったのは特に悔やまれる点だ。
今野は長谷部誠(フランクフルト)と併用可能なくらいの能力は備えているはずだし、それが中国戦でも明らかになったが、韓国にはデュエルでも競り合いの部分でも負けていた。井手口に至っては消える時間が長すぎた。
彼らのような欧州組同等のトップ選手が自らアクションを起こし、流れを変えていくようなアプローチができなければ、日本代表は本当に厳しくなる。「ハリルの申し子」と言われる井手口は特に短期間での劇的な成長が強く求められるところだ。
FW陣も伊東と小林の2人がかすかな希望を示すのみにとどまった。伊東は冒頭のようにPK奪取に成功し、持ち前のスピードある仕掛けで何とか状況を変えようとしていたが、肝心なところでボールを受けられなかったり、キープできないなど、国際経験の少なさを垣間見せた。
そのあたりは同じ右FWを争う浅野拓磨(シュトゥットガルト)や久保裕也(ヘント)、本田圭佑(パチューカ)に比べると見劣りする部分だ。小林にしても真ん中と右の両方をこなせる万能性は武器だが、国際舞台でのゴール数がいかんせん少ない。大迫勇也(ケルン)や岡崎慎司(レスター)と競争するとなると、そのマイナス面は否定できないだろう。
こうした現状を踏まえると、ロシア本大会は“欧州組偏重メンバー”で挑むしかないのが現実か。日韓戦で惨敗を喫したメンバーが最後の最後で滑り込むためには、残された半年間でよほどのインパクトを残さなければならない。
たとえば、井手口であれば、噂されている欧州移籍に踏み切り半年間でトップレベルの経験値を引き上げる、小林であれば来季Jリーグでの開幕からのゴールラッシュを見せる、中村であれば課題のハイボール処理も含めて公式戦で完封を続けるといった目覚ましい働きが求められる。
いずれにしても、今回の屈辱を生かすか殺すかは個人個人の意識と取り組み次第だ。ハリルホジッチ監督体制でこのままロシアへ行くことにも大いに不安は残るが、体制が変わらないのであれば、プレーする側が変わるしかない。指揮官の戦い方だけに捉われず、自己判断できる選手になるべく、彼らにはより強い自覚を持ってもらいたい。
(取材・文:元川悦子)
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