右足に不安を抱えているとは思えない存在感
アフリカ王者のウィダード・カサブランカを延長戦でくだしてから、中2日で南米王者グレミオに挑んだパチューカ。フル出場した前の試合に続き[4-3-3]の右インサイドハーフで先発した本田圭佑は右足に不安を抱えているとは思えない動きで存在感を放ち、南米王者のディフェンスを苦しめた。
インサイドのプレーで目立ったのは1タッチ、2タッチのショートパスの多さ。しかも、周りのビクトル・グスマンやホナタン・ウレタビスカヤが前を向ける状況を作るパスだ。
瞬時の1歩、2歩の動きでグレミオの守備を外し、とにかく味方から影にならないポジションでパスを引き出すと、1タッチパスでアンカーのホセ・エルナンデスに渡す、あるいはファーストコントロールでディフェンスの逆に持ち出して叩くなど、時間をかけずに起点として機能した。
そこからチャンスと見た時の縦への仕掛けは迫力があった。8分に惜しいミドルシュートを放ったシーンでは右ウィングのウレタビスカヤが二人のディフェンスを引き付けて中に出すと、1タッチ目で左斜めのスペースにコントロールし、ディフェンスラインがブロックを作り切れないタイミングで左足を振り抜いた。
南米王者のデュフェンスはハイプレスをかけてはこないものの、中盤とウィングが絡むところに3枚、4枚と厳しいプレッシャーをかけてくる。
ウルグアイ代表のウレタビスカヤはボールを持って縦に仕掛けるタイプで、左インサイドハーフのグスマンは2列目から飛び出すチーム随一の得点源であることを考えれば、本田とアンカーのエルナンデスがいかにプレッシャーを引き受けるかが、中途半端にボールを失わず、チャンスを作るための生命線だった。
周りの特徴をうまく引き出しながら、機を見てフィニッシュに絡んでいこうという意識はチーム戦術を理解し、味方との信頼関係が無ければ成り立たない。グレミオのディフェンスにとっては本田にボールが入ると何かが起きるという感覚もあっただろうが、主には個で打開するより周囲をうまく生かし、タイミングを見計らって仕掛けてくるという形で非常に厄介だったはずだ。