「ベンチですべてのポジションを見てきた」
準々決勝でUAE(アラブ首長国連邦)代表に屈し、連覇を逃したアジアカップの4試合を含めて、3年弱の間にリザーブのまま試合を終えたのが14度。ベンチにすら入れず、スタンドで仲間たちの試合を見届けたことも3度ある。
自身よりも遅れて招集された選手が、A代表デビューを果たしたケースも少なくない。今大会で言えば、北朝鮮戦でGK中村航輔(レイソル)、DF室屋成(FC東京)、伊東、FW阿部浩之(フロンターレ)がひとつ目のキャップを獲得した。
6大会連続6度目のワールドカップ出場を決めた後の10月シリーズ。ニュージーランド、ハイチ両代表と対戦した国際親善試合でも、フィールドプレーヤーではただ一人、出場機会を得られなかった。練習の段階から予感めいたものがあったのだろう。ハイチ戦後にはこんな言葉を残している。
「ショック? いまですか? もちろんです。でも、僕はやり続けるしかないので」
もっとも、ショックは受けても、下を向くことはなかった。アントラーズに戻り、何が理由なのかを自問自答しながら日々の練習に一心不乱に打ち込んだ。あきらめたら、その瞬間にロシアのピッチに立つための挑戦は終焉を迎える。
「何かが足りないからこそ、試合に出られなかったと僕は思っているので。(三浦)弦太もそうですけど、いままでも練習の段階から常に厳しく臨んで、今回は監督からも『すごく状態がいい』と言われていた。だからこそ今回は試合に出られたし、あらためて練習がすべてだと思いました。
早く出たいという気持ちはありましたけど、ベンチですべてのポジションを見てきたからこそ、完璧とは言えないけど、今回の右サイドバックもできたと思う。無駄なことはひとつもなかったし、いまの自分に全部つながっているという意味で、今日も少しは生きたんじゃないかなと思う」