失われた新しい試み
急造チームに監督の戦術が浸透してパフォーマンスが改善されたのは喜ばしいが、それはロシアワールドカップとは直接関係がない。小林や伊東らの活躍も、ワールドカップメンバー23人への競争が激しくなったということ以上の意味はない。
ワールドカップのために今必要なのは、たんにハリルホジッチのチームでプレーできる選手を増やすことではなく、ハリルホジッチのチームに新しい何かを加えることだ。
その意味でも大島僚太の負傷退場は残念だった。大島がいれば、小林とのコンビネーションをもっとテストできただろう。阿部浩之を途中投入すれば3人、車屋紳太郎を加えれば4人での川崎フロンターレのコンビネーションを使える。
相手の守備ブロックを崩すために「個」ではなく「連係」という新しい手を加えられたかもしれない。ハリルホジッチ仕様の小林ではなく、川崎フロンターレの小林を機能させることができたかもしれないのだが、その機会は失われてしまった。
韓国戦は今まで以上に守備力を試される試合になるだろうから、ハリルホジッチ仕様の総決算的な内容になりそうだ。ただ、このチームは今回限り。ワールドカップへの強化の点では新しい発見に期待したいが、なかなか厳しい状況ではある。
(取材・文:西部謙司)
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