ナビ搭載は育成の課題
かつては、頭に地図が入っている選手は特別だった。ジノ・サニがわざわざそう言っていたのも希少価値だったからだ。ところが、現在では特別な才能に恵まれていない選手でもナビゲーション・システムは搭載されている。
ルカ・モドリッチやアンドレス・イニエスタのそれは特別としても、彼らの周囲にいる特別でない選手にもナビは付いているのだ。いつ、どこで、どういう状況で何をすべきか、自動的に判断できる選手が多くなっている。
クラブチームで毎日一緒にいるという環境でなく、寄せ集めでもある程度イメージの共有ができる。ペップ・グァルディオラのような特別な監督の下でナビが搭載されるという例もあるが、根本的にはナビが搭載されるような育成をしてきた結果だと思う。
寄せ集めに近いE-1の日本代表にコンビネーションがないのは仕方がない。なので、これは現在の代表チームではなく育成の課題になるのだが、素の状態でもスムーズに連係できる選手を育てる必要があると思う。現状でそうなっていないので、すでにこの部分では遅れていると考えたほうがいい。
「JリーグのFWは背後でパスをもらうのに慣れていない」(ハリルホジッチ監督)
素の状態で連係できないうえに、選手は慣れていないことを要求されているのだから、余計に上手くいくはずがない。しかし、ハリルホジッチ方式で機能しなければ、Jリーグの連係をそのまま代表に転用する芽はなくなる。
あと2試合で何ができるかわからないが、北朝鮮戦でのアディショナルタイムにあった2つの攻撃がわずかな望みであり収穫かもしれない。
(取材・文:西部謙司)
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