戦術「無我夢中」で終焉へ
「バランス」を欠いたことで、再び“DNA”――プレッシング及びゲーゲンプレッシング――が機能することも無くなってしまう。13分、カウンターで容易にボールをペナルティエリアの手前に運ばれる。22分、ロングボールを放り込まれ、ネヴェン・スボティッチとマルセル・シュメルツァーの2人掛かりでニクラス・モイサンダーと競るが、そのセカンドボールを拾えず、ズラトコ・ユノゾヴィッチにフリーでシュートを打たれてしまう。
そして26分。エリアの手前からマックス・クルーゼに右に振られる。パスを受けたマキシミリアン・エゲシュタインに、ラファエル・ゲレイロがかわされ、香川の目の前でシュートを打たれ、先制点を許した。
以後もボス監督の“対ブレーメン戦用の[3-4-3]”が機能することはなく、39分、痺れを切らしたのか、指揮官は香川をトップ下に上げ、ゲレイロをダフートとボランチで組ませることで[4-2-3-1]に布陣を変更。いよいよ“遺産”は打ち捨てられ、ここに「かすかな希望」も潰えた。
後半に入るとドルトムントは、ただひたすら、がむしゃらにブレーメンのゴールに迫った。57分には、シュメルツァーのアーリークロスを、ファーで香川が折り返して、オーバメヤンが突っ込んで1点を返す。
だが、反撃もそこまでだった。勝利を目指して無我夢中で攻め立てたが、攻撃に秩序は無く、ゴールに結び付くことはなかった。
65分、CKからゲルべ・ゼーラシにヘディングで勝ち越し弾を許す。結局、この1点が決勝点となり、ここにピーター・ボス体制は終焉を迎えることになった。
試合後のジグナル・イドゥナ・パルクがブーイングに包まれてから、およそ3時間半後――12月9日20時42分付の『シュポルト・ビルト』電子版によれば、明日(10日)、BVBよりオランダ人指揮官の解任が公式発表される、とのことである。
(取材・文:本田千尋【ドイツ】)
【了】