「かすかな希望」の光りに背を向ける
“遺産”を放棄した。12月9日に行われたブンデスリーガ第15節、対ベルダー・ブレーメン戦。ペーター・ボス監督は、引き続き[3-4-3]の布陣を採用する。芽生えつつあった「かすかな希望」としての“新布陣”。だが、その中身は、明るい兆しが見え始めた過去2戦——2日の対レバークーゼン戦、6日の対レアル・マドリード戦――とは、まるで異なっていた。
ダブル・ボランチに並んだのは、マハムート・ダフートと香川真司。過去2戦とは違い、香川は2シャドーの左ではなく、中盤の底での出場となった。3トップは左からクリスティアン・プリシッチ、ピエール=エメリク・オーバメヤン、アンドリー・ヤルモレンコが並ぶ。3バック及び左右両ウイングバックについては、前試合のレアル戦同様のメンバーである。
ボランチにヌリ・シャヒンのような6番タイプを欠き、また、香川が1列下がったことで、[3-4-3]の性質はガラリと変わってしまった。前半、BVBはラインを高めに設定し、低い位置のダフートと香川を中心にボールを回した。しかし、3トップとの間に距離が開き、全体的に「バランス」が悪く、攻撃は単調なものとなってしまう。
ボール・ポゼッションを高めることはできても、アタッキングサードに入っていくことができない。一発で相手の裏を狙おうとする傾向が強くなり、ウイングバックが絡む連動性は鳴りを潜めた。ヤルモレンコが1列下がってパスを受けることもあったが、ウクライナ代表FWの本職はウインガーであり、ゲームを組み立てることは本分ではなかった。
やはり香川がシャドーの左に入って攻撃の軸となり、守備的MFが1人はボランチに入ってこそ、「バランス的に見ても去年を含めてやっている」[3-4-3]は機能し始めていたのだ。しかし、ここに来てオランダ人の指揮官は、そうしたトーマス・トゥヘル前監督の遺産を、顧みることはなかった。