捕まえたと思っても捕まらない
小さくて速い選手の共通の特徴はドリブルのタッチが細かいことだ。サラーは常に左足のアウトサイドで触れる場所にボールを置き、相手の間合いを計ってステップを踏み換えて瞬間的に抜く。
これぐらい上手くて速い選手になると、だいたい相手を見た瞬間に自分とボールを通過させる道筋が自然と見えているようだ。逆に、対峙する相手には止め方がわからない。速さが規格外なのでリズムも間合いも読めないからだ。まだ仕掛けてこないだろうというタイミングで仕掛けてくるし、捕まえたと思っても捕まらない。
エジプトを代表するスターといえば、アル・アハリのモハメド・アブトレイカだった。長身でゆったりしたリズムから決定的なパスを繰り出し、得点力も優れていたアブトレイカがエジプトの“ジダン”とすれば、やはりサラーはエジプトの“メッシ”だ。
(文:西部謙司)
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