攻撃面での成果を評価できる「パッキングポイント」という指標
庄司氏が「ポゼッションをメインにしていなくても、ボールを持ったときにどうするかということは本大会を戦う上で必要なことです」と語るように、相手の守備ブロックを崩すときにどうするかは日本の課題になりそうだ。ただ、ボールを持っているだけでフィニッシュまで持ち込めない状況でボールを失えば、カウンターから失点してしまいかねない。ボールを持ったときに、より実効的な攻めができているかが重要になる。
ボールポゼッション率は相手の守備を崩せているかに関してそれほど直接的な意味をもたないが、攻撃面での成果、プレー内容を評価できる値はないのだろうか。庄司氏によれば、相手の守備を崩すという意味でより有意義な指標として「パッキングポイント」という考え方がドイツで考案されているという。
「ボールポゼッション率では、実際に相手を崩せているかがわかりません。それを踏まえて考案されたのが『パッキングポイント』というものです。これは、1本のパスで何人の相手選手を飛ばすことができたか、を計る指標です。
図2にあるように、たとえば選手Aが選手Bにパスを通して、Bが前を向けたとします。このパスでは6人の相手選手を通過しているので、6ポイントが入ります。Bが前を向けなかった場合は、貢献度が下がるのでポイントは80%減らされて20%分のポイントが入ります。このケースでBが前を向けなければ、6×0.2で1.2ポイントが入るということですね。
これは出し手と受け手の両方にポイントが入ることになっています。つまりパス出しがうまいだけでなく、パス受けがうまい選手も評価されるわけです。手元にEURO2016におけるチームごとの『パッキングポイント』をまとめたデータがあるのですが、GS1位突破を果たした6チームが全24チームのトップ6を独占していました。現代サッカーにおいては、かなり有意義な指標と言えると思いますね」
日本代表は9日からE-1選手権に臨む。庄司氏はこの大会の注目ポイントについて、「ハリルホジッチ監督がまず落とし込もうとしているゲームコンセプトに適応できるかということに加えて、ボールを持ったときに『パッキングポイント』のような考え方でどれくらい貢献ができるかというところも見どころになりそうですね」と語った。北朝鮮、中国、韓国という東アジアの3チームを相手に、日本はどのような戦いぶりを見せるだろうか。
(分析:庄司悟/取材・文:中山佑輔)
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