「ボールを持たされる」ことへの懸念
ブラジル戦の3失点目は被カウンターによるものだったが、日本は2014年のブラジルワールドカップでもカウンターを受けたときのもろさを露呈していた。庄司氏は、ハリルホジッチ監督が日本代表を率いている現在でも、この部分が本大会に向けて危険なところだと指摘している。
「日本がボールポゼッションからのカウンターに弱いということは2014年のワールドカップで証明済みです。前大会のコロンビア戦のボールポゼッション率の推移を時間ごとに示したのが図1なのですが、ボールポゼッションでは日本が上回っていますね。結果はご存じのとおり、1-4で日本が負けました。得点が必要だったという状況もありましたが、前がかりになってカウンターから失点を重ねたことは記憶に新しいですね。
ハリルホジッチ監督は『ポゼッションすれば勝てるというわけではない』という趣旨のことを言っていて、ポゼッション志向でないことは明白です。そして、ハリルホジッチ監督が落とし込もうとしているゲームコンセプトは、ポゼッション重視でないことに加え、不用意なボールロストを減らそうという意図が読み取れます。
相手から奪ったボールをサイドから素早く前線に送り、そこで攻めきるイメージです。カウンターは相手の守備が整っていないところを攻め込むので、守備ブロックを作られたときよりも攻めやすいということもあるでしょう。
とはいえ、相手が守備ブロックを整えてきたら、ボールを握りながら崩さなければならない。ですがポゼッションをして攻めるというのは、今の日本の陣容的に難しいところがある。それは守備の強度を優先しているので仕方ない部分が大きいですが、被カウンターに弱いチームが、ボールを持ったら崩せないという状態です。となると、日本にボールポゼッションさせてしまえという戦い方をされる恐れがあります。
ポゼッションを重視していなくても、そうした状況に誘導されてしまう可能性があるわけです。ボールを持たされた状況で困難に陥ってしまうと、ブラジル戦の3失点目のようなカウンターをくらう可能性が高まります。そうした例としては、ドルトムントでクロップ監督が最後に指揮を執ったシーズンを思い返すとわかりやすいでしょう。まさにそのような戦略をブンデスリーガで取られてしまい、大苦戦していました」