「Jリーグのとあるチームに大変なことが起こる」
日本サッカーとの接点ですか? 当時はそんなになかったですね。もともとスポーツは何でも好きで、サッカーについては86年のワールドカップ・メキシコ大会からTVとかで観ていました。
でも社会人になってからは、せいぜいアトランタ五輪を(TVで)観ていたくらい。Jリーグはすでに始まっていましたけど、最初の頃はなかなかチケットが取れなかったし、その後はあまりTVでもやらなくなったし。
まさか、のちに自分がフリューゲルスに関わるとは夢にも思わなかったです。結局、97年の終わりくらいまで出版社で働いて、それからフリーになりました。
フリーのライターになったのは、社内的な事務作業から解放されて、書くこと一本に専念したいというのがありました。世の中的には不況の真っ只中でしたけど、当時はライター稼業でも普通に食べていけました。
『週刊SPA!』とか『別冊宝島』とか、少しして『AERA』とかに書いていたけど、当時はページ単価が良くて4万から5万くらいでしたかね。今はどうだかわからないですけど、勤めていた頃と変わらないくらいの年収は確保できていました。
ちょうどその頃、『サッカーチャット』という日本代表を応援するサイトがあって、チャットや掲示板の書き込みでよく出入りしていました。チャットも掲示板も、今の人はよくわからないですかね。要するにネット上の言論空間で、そこには今もサッカー業界で仕事をしている有名人とかいたんです。
当時はニフティの『サッカーフォーラム』が有名で、そこから流れてくる人もいましたね。ちょうどワールドカップ(フランス大会)の予選の頃だったので、けっこう荒れることも多かったですが。
そこではみんなハンドルネームを持っていて、私は〈SPEED〉と名乗っていたんですけど、〈クーマン〉とか〈ベベット〉とか自分が好きな選手を付けている人も多かったです。あと、仕事でJリーグに関わっている人とかも結構いたんですよ。
ちょうど、フリューゲルスの合併が報じられる前日でしたかね。〈カントナ〉と〈セルジオいちご〉というハンドルネームの人たちが「Jリーグのとあるチームに大変なことが起こる」みたいなことを書き込んだんです。
他の人たちが「どんなこと?」とか「どのチームだよ」とか聞くんだけど「明日の朝刊を読めばわかる」としか答えない。そんなやりとりが深夜遅くまで続いていたように記憶しています。