「彼らのおかげで優勝できたと思うし、本当に感謝しています」(中村憲剛)
ガンバ時代の2014シーズンには、国内三冠を独占したチームで主役の一人を演じた。勝者のメンタリティーを知る前線の仕事人は、EAFF E-1サッカー選手権2017に臨むハリルジャパンにも初選出され、4日から都内で始まった代表合宿で新たなチャレンジを開始している。
開幕戦に出場した後はけがで長期離脱を強いられた家長は、阿部以上にフィットするまで時間を要した。復帰してもピッチ上で噛み合わない状況が続いた。もがき苦しんでいるのがはっきりとわかった。ちょうどチームも上向きに転じていたこともあり、中村はこんな言葉を残していた。
「徐々に、徐々に、ですね。アキ自身のポテンシャルの高さは疑いようがないし、アキがフィットするのを待つ余裕が、いまのウチにはある。(時間の経過とともに)アキの特徴を引き出してあげればいいし、周りも特徴を感じてあげられればいい」
移籍後初ゴールをあげたのは、くしくも阿部が9点目をあげた8月13日のアントラーズ戦。リザーブの選手たちを含めて、まるで優勝したかのような祝福の輪がピッチに広がった。それだけ家長が苦しんでいることを、周囲もわかっていた。
以来、2列目の右サイドを定位置としながら、家長は神出鬼没の動きで前線において躍動。フロンターレに欠かせない一人となり、最終節では3アシストをマークした。
「優勝できたことが一番だし、やっぱり優勝するために来たので」
思いを短い言葉に込めた31歳は、フィットするまでに長い時間を要した1年をこう振り返った。
「そういうことを含めて移籍であり、そういうのを求めてチャレンジしたと思うので」
ボールを止めて蹴る。相手のマークをはがす。相手の考えの逆を突く――。風間前体制から変わらないコンセプトを、フロンターレにおける在籍期間に関係なく、阿部と家長を含めた今現在のピッチ上にいる全員で共有した末に生まれた後半15分の小林のゴールに、起点となった中村も声を弾ませる。
「あの2人もすごく苦しんでいたと思うけど、フィットしてからはこれ以上頼もしい選手たちはいないくらいの活躍をしてくれた。アキも阿部ちゃんもけがで離脱していた時期があったけど、その間は僕や悠で何とか踏ん張って、という感じで。彼らのおかげで優勝できたと思うし、本当に感謝しています」
天皇杯ですでに敗退しているフロンターレの2017シーズンは、悲願の初タイトルを獲得したJ1最終節で幕を閉じた。見る側を唸らせ、楽しませ、そして感動させられる極上のコンビネーションの続編は、小休止するのが惜しいという思いを残しながら、連覇をかける来シーズンへと引き継がれる。
(取材・文:藤江直人)
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