懐かしさもある新布陣。変わり始めたドルトムント
FCシャルケ04とのレヴィア・ダービーから「トライ」が始まったこの布陣について、香川は「バランス的に見ても去年を含めてやっていること」と言及する。ここにきて指揮官ピーター・ボスは、前監督トーマス・トゥヘルの遺産を活用し始めたようだ。3バックを軸に、守備時には左右両ウイングバックが下がって5バック気味になる。攻撃時にはボール・ポゼッションを高め、両ウイングバック=ゲレイロとクリスティアン・プリシッチが高い位置を取ってウイングの役割を果たす。そして香川とヤルモレンコの2シャドーだ。
アヤックス型の[4-3-3]にこだわっていたオランダ人監督も、ブンデスリーガという新しい環境の中で、変わらざるを得なかった、ということだろうか。
「守備がなかなか安定していなかった。人数を掛けて守るっていうのを徹底したかったと思いますし、(ボールを)獲った後に両サイドバック、両ウイングがね、やっぱり自分にとってストロングになりつつあったんで、そこを活かしながら攻撃を仕掛けて行くっていうのはあるんじゃないかなと思います」
昨季の終盤にはゲレイロ、マルコ・ロイスとのコンビネーションが冴えていた香川。“新布陣”の中での、自分の活かし方を心得ている。
同点に追い付いたドルトムントは、試合の終盤に掛けて、連動性を発揮して中央からレバークーゼンを攻め立てる。アディショナルタイムには、ゴール前でプリシッチの折り返しを香川が触って、ゲレイロがシュート。最後の最後まで、久方ぶりの勝利を目指した。だが、ついぞ勝ち越し弾は奪えず、試合は1-1のドローに終わった。
10人の相手を崩し切ることはできなかったが、香川は「負けなかったということをプラスに捉えていきたい」と語った。
「(相手が)1人少ないのは大前提ですけど、ボールの回し方、距離感含めて良いところたくさんあったと思っているし、個人的には左から行けたシーンもあったんじゃないかなと思ってるんで。それが最後結果につながるかつながらないかだけの話であって、そこは紙一重だと思ってるんで、なので悲観する必要はないですし、これをポジティブに、そして次、決めるという気持ちを持つことが一番、こういう戦いになってくると大事になるのかなと思います」
猫を噛む窮鼠のように、“新布陣”で敗戦を免れたドルトムント。香川は「みんながこの戦いを信じてやり続けて行く必要がある」と言う。
11月21日のCLでトッテナムに打ち砕かれた希望——思わぬ形で再生が始まった。
(取材・文:本田千尋【レバークーゼン】)
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