「ベタな言い方だけど最高、本当に最高なんだよ!」
表彰式後のひとコマ。事前にスタッフから手渡されていた黄色いキャプテンマークを、小林はポケットからサプライズ的に取り出し、中村の左腕に巻いた。長くチームを支えてきたレジェンドに対する、最大級の感謝の思いがそこには込められていた。
本物のシャーレはヤマハスタジアムで待機していたため、シャーレの写真が貼られたボードを小林と2人で誇らしげに掲げた。夢にまで見た瞬間。表彰台のうえからの景色を見た中村の心に、予想していた通りの思いが膨らんできた。
「僕が15年間も求め続けたのはこれだったんだな、と。あの景色はみんな忘れられないはずだし、自分たちが積み重ねた努力への対価というか、あの景色をまた体感するために頑張れるし、新たなモチベーションが膨らんでくる。人間なので、一回だけじゃ物足りないという欲が出てくるよね」
天皇杯では準々決勝で敗退しているため、アルディージャ戦をもってフロンターレの2017シーズンは終わる。EAFF E-1サッカー選手権に臨むハリルジャパンに選出されている、小林ら5人以外はオフに入る。もっとも、中村の視線は英気を養うはずのオフを飛び越え、来シーズンへ向けられている。
「いますぐ(サッカーを)やりたいので。やっぱり優勝はいいよね。ベタな言い方だけど最高、本当に最高なんだよ!」
史上最高齢でリーグMVPを獲得した昨シーズンに続いて、体と技が放つ輝きは群を抜いていた。そこへ初タイトルがもたらす喜びが、心をも充実させているのだろう。永遠のサッカー少年のような、無邪気な笑顔を浮かべながら、中村は「2017年12月2日」のすべてを記憶に焼きつけていた。
(取材・文:藤江直人)
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