疑いない才能。周囲は一様に舌を巻いた感も
首脳陣はどのように捉えたのか。「仕掛けながら運べる」と立石敬之GMは特長を端的に述べたが、安間貴義監督はさらにこまかくプレー内容を並べた。
「彼のところでしっかりとボールを前に運べるようになりましたし、タメをつくることもできました。それ以上にドリブルの仕掛け、周りの選手をうまく活かすこと、しっかりと状況判断をしながら、危険なプレーも要求以上のこともしてくれている」
髙萩は3-4-3の時点では左右のフォワードを分け合い、4-2-3-1となってからは右に位置して中央の久保を見守り、試合中間近にいた。ピッチサイドにいた安間監督、スタンドにいた立石GM、さまざまな場所にいた同じチームの人物が一様に舌を巻いた感のある評価を与え、対戦相手も認めているとあっては、もう才能そのものに疑いの余地はない。
これをいかに活用できるようにしていくかが、今後の課題となる。安間監督はこうも言っていた。
「周りとの関係がもっと良かったら、もっと活きると思う。周りに信頼されて自分のほしいタイミングで預けてもらえるようにもっともっと意思表示していく必要があるとも思います」
ピッチ上の序列は年齢よりも皮膚感覚で理解できる実力によって成り立つ。そして「巧ければ一目置かれる」と言うときのその巧さは、選手から見た巧さだ。久保にはそれがあり、信頼が十分ではなくとも、ボールがまったく出てこないような状況ではない。関係がよくなっていく素地はある。改善されれば、久保とチームの双方が発展する。そうなってほしいものだ。
最後にひとつ言及しておきたいのは、守備意識の高さだ。途中出場で他の選手よりも働かなければという意識が作用したのかもしれないが、途中出場してすぐの23分に久保は猛烈なプレッシャーをかけに行き、30分にはかなり長い距離のプレスバックを見せている。
このあと東京ゴール裏からは「タ・ケ・フサ!」コール。実効性が伴うプレーであり、周囲を鼓舞する働きだった。
ゴールデンエイジで身に付け、短い期間ではあったがバルセロナでも育まれた技術と判断と、FC東京のアカデミーにやってきてから高めた守備意識とのハイブリッドが久保の現在地。
ボールを奪うことで攻撃の第一歩とし、個人でボールを運びながら周囲との連係も活かす。この姿を昇華させ、J1で常に見られるようにすることが、次のミッションとなるだろう。
(取材・文:後藤勝)
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