チーム全員で掴んだ栄冠。刻まれた新たな歴史
浦和の偉業が称賛に値するのは、そういった戦いぶりにこそ理由がある。また、チームの全員がそれぞれの貢献を果たしてきたことも称賛されて然るべきだ。
例えば森脇や高木などは、先発のイレブンから名前が消えかけていた選手たちだった。ミハイロ・ペトロヴィッチの仕事も忘れてはならない。昨年のJ1で歴代最多勝ち点を獲得しての年間総合首位という成績を残して浦和に今大会の出場権をもたらした前監督は、チームを準々決勝にまで導いた。そこからは堀監督が巧みな仕事で修正を施して栄冠への道を繋ぐことができた。
新監督が青木拓矢と長澤を先発に加えたことは、今大会終盤戦のレッズの戦いに欠かせない要因となった。前者は4バックの前にぜひとも必要だった盾の役割を果たした。長澤もまた、非常に優れた選手へと成長できると感じさせる。
俊足も、落ち着いたボール捌きも、フィジカルの強さも十分に兼ね備えている選手だ。槙野智章も4バックへの変更以降は守備に力を発揮し、最終ラインで体を張る役割を楽しんでいる様子だ。
済州と川崎F相手に目まぐるしい戦いを演じたあと、浦和は準決勝と決勝では新たなシステムではるかに統制が取れたチームとなっていた。
スコアはどちらも全く同じ。アジア屈指の力を持つ上海上港とアル・ヒラルを相手に、アウェイではしっかりと1-1のドローに持ち込み、ホームではラファエル・シルバの得点による1-0の勝利で仕事を完結させた。
今季のラファエル・シルバは非常に充実しており、冷静で質の高いプレーを提供しつつ、ゴール前での決定力も発揮してきた。
今大会で決めた9得点は、驚くべきことにわずか10本の枠内シュートから生まれたものだった。一方、大会MVPに選出された柏木陽介もここぞという場面で必ず力を発揮してみせた。本格的に成熟した姿を見せ、中盤における浦和の重鎮の役割を果たすようになってきた。
もちろん2人は、今後もまだ数年間レッズに大きな貢献を果たすことができるだろう。だがクラブの歴史に名を残す存在となることはすでに約束されている。
決勝の公式放送に関わる中で、2007年のヒーローである永井氏と2日間をともに過ごす機会を得ることができた。レッズの前回ACL優勝時に決定的なゴールを挙げてMVPに選出された彼が、今でもクラブのファンに強く尊敬されていることが非常に印象的だった。
こういう瞬間こそがまさに、クラブや選手たちの歴史を生み出していくものだ。栄光の瞬間を味わったレッズのメンバー全員に称賛と祝福を受ける資格がある。
(取材・文:ショーン・キャロル)
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