強化面と財政面での計り知れない功績
「もし2部リーグから1人の若い選手を見つけ出し、彼が少額でサインをして、ブンデスリーガでインパクトを残したら、それは誰もが必要とするカギとなる瞬間だ」
インパクトを残したのは「カガワ」だけではない。フンメルス、ベンダー、スボティッチ、クーバ、レバンドフスキといった選手たちは、13年にチャンピオンズリーグの決勝に進出したドルトムントの主軸を務めた。
ファイナルでドイツ国内を二分するライバル=バイエルン・ミュンヘンに敗れはしたが、ユルゲン・クロップ体制のハイライトの影の功労者は、他ならぬミスリンタート氏だったと言えるだろう。
オーバメヤン、デンベレ、プリシッチといったスピード系のアタッカーたちは、トーマス・トゥヘル体制でブレイク。その中でデンベレは、今夏、1億500万ユーロの移籍金を残してFCバルセロナに新天地を求めた。
強引にでも交渉を進めるために練習をボイコットするなど、そのやり方の是非はともかく、“ダイヤモンド・アイ”が見つけ出した「若い選手」が、またもクラブに莫大な富をもたらしたのは間違いない。
レバンドフスキ、フンメルスも、多額の移籍金でバイエルンに移った。ヨーロッパの大会を勝ち上がるための戦力を充実させただけでなく、財政面においても、ミスリンタート氏の果たした功績は計り知れないのだ。
そんな“稀代の目利き”を、他のブンデスリーガのクラブは放っておかなかった。フォルトゥナ・デュッセルドルフ、ハノーファー96、ハンブルガーSV、バイエルン…2部所属の古豪から1部所属の名門、さらには国内王者まで、数々のクラブが獲得を熱望した。
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