ストレスを抱えながらの職務。白髪も目立つように…
少し長いが、辞任会見でのポスタコグルー前監督の発言を引用しよう。
「この決断は、私にとってとてもタフな決断だった。自分にとって、代表監督として祖国の代表を指揮するのは名誉だったし、2014年のブラジルW杯出場、その翌年のアジアカップ制覇、そして、今回、来年のW杯へとチームを導いたことの全ても誇れる結果。そうしたいと言っていたことを、今、やり遂げた」と“privilege”という単語を何度も使って言葉を繋いだ。
さらに、「とはいえ、それ(を成し遂げる日々)は、私自身、個人的、そしてプロのコーチとしても大きな犠牲を強いるものだった。私はこのタスクに自分が出来得る全てをつぎ込んだ、全てはオーストラリアのフットボールのためと思って。ここで、この監督としての旅路を終えなければいけないのは、寂しくかつ残念な思い」と、時折首を捻りながら言葉を絞り出す。
「自分の祖国を代表監督として指揮するのは、最高の栄誉であると同時に巨大な責任を抱えることでもある。私は、今こそ、その責任を背負うに求められる充分な活力を持った誰かに受け渡すのに良いタイミングだと思う。私のこの決断は、FFA、選手たち、そしてファンの方々に大きな借りをつくることになる。代表チームが来年世界に挑むのを見守るのを楽しみにしているし、代表のこれからの未来には多くの特別な瞬間が待っていると確信している。私は、それを距離を置いたところから、見守り応援できるのだから幸せだ」
これらの発言からも分かるように、結局、辞任の理由らしい理由は述べないままに去るポスタコグルー監督。ただ、ここ数か月で髪や髭に白い物がかなり目立つようになったことや、エモーショナルになりながら絞り出したそのコメントの端々から相当なストレスを抱えての任務遂行だったことが、十分に伺える。
長きに渡って晒されたメディアやフットボール・コメンテーターからの批判めいた対応にも、相当のフラストレーションを抱え、それに対する苛立ちも隠し切れなくなっていた。かつて、ブリスベン・ロアを指揮していた頃、夫人がブリスベンの暮らしに合わず、メルボルンに戻りたがったことが契約更新せずにメルボルン・ヴィクトリーの指揮官に就任した理由とされたこともあった。選手のチェックや遠征などで旅回りの多い今の職務にプライベートの面で何か支障をきたした可能性も否定はできない。