豪州代表監督、10月から燻っていた辞任の可能性
11月22日、起き抜けにつけたテレビのニュースはジンバブエの高齢の独裁者の退陣を報じていた。通りに飛び出て、ついに来たその日に喜び踊る民衆の姿をカメラは捉えていた。嬉しそうな彼らを見て、こちらもハッピーな気分にさせられたが、そんな気分も長くは続かなかった。
頭が回り始めてからの朝一番のメールチェックで、「午前4時10分」という異例の早朝に送られたFFA(オーストラリアフットボール連盟)のプレス・リリースを見つけた。曰く、「本日午前9時、デービッド・ギャロップCEOならびに豪州代表アンジ・ポスタコグルー監督の記者会見に関して」。
前日に上記2人が長い会談を持ったことは報道で知っていた。となると、このタイミングでの急な記者会見の設定となれば、相当の重大事なはず。留任か辞任のどちらがよりセンセーショナルかと考えれば、重大事が何なのかの答えは明白で、この時、ほぼ悟ったーー「アンジ辞任」が現実となりつつあることを。
実際、予想は現実のものとなった。9時過ぎ、ちょうど会見が終わるのを見計らって、各メディアが速報で「アンジ・ポスタコグルー監督辞任」を伝えた。詳しい経緯と事情を知らない人にしてみれば、このタイミングでの辞任は何とも寝耳に水だったろう。しかし、この国でフットボールの周辺事情をカバーしていれば、この辞任の可能性を低くは見積もることはなかった。
10月のシリアとのW杯アジア予選プレーオフの直後、「ポスタコグルー監督、W杯出場決定後に辞任か」の記事が最初に出た時も、ポスタコグルー監督は「今はそういうことを話す時期ではない」としながらも、明確に噂を否定することはなかった。
監督に近い筋が、彼の苛立ちを代弁することもあった。個人的に親しい現ブリスベン・ロア監督ジョン・アロイジの「ホンジュラスに勝ってW杯出場を決めても辞める可能性は高い」とのメディアでの発言もあった。そんな状況証拠から豪州フットボール界の多くは、「アンジは辞めるだろう」という前提を持ちつつ事の推移を見守った。