安定感を高めているバルベルデ・バルサ
しかし、ボールを奪われて何もできなかったというわけではなかった。メッシの代役としてトップ下に入ったMFパウリーニョは列の移動を頻繁に行いながら味方をサポートし、ボールの循環を促した。さらに、3分、7分と立て続けにバイタルエリアに侵入し、自らフィニッシュに繋げる場面も見られた。
トップ下や右サイドハーフの導入により右サイドに人が多く集まることで、ポジションを1つ下げたラキティッチは、相手とのかみ合わせで常にフリーとなっていたアンカーのブスケツと共にビルドアップに貢献した。逆に左サイドで以前よりも大きなスペースを得たイニエスタは、相手の2列目と3列目の間にポジションをとる機会を増やしながら、ボールを受けては得意のドリブルで仕掛けどころとなっていた。
それでも点が入らない状況を見かねて、56分、バルベルデ監督は遂にデウロフェウに代えてメッシを投入。トップ下にメッシ、右サイドハーフにラキティッチ、2ボランチの左にパウリーニョが入ると、右サイド偏重型だった前半の布陣と違い均等に選手が配置された。これにより、左右偏りなく仕掛けることは可能となったが、変化をつけることは難しくなったバルセロナは、なんとかメッシの個の力で打開を図った。
68分、中盤でボールを持ったメッシは、左サイドを駆け上がったDFリュカ・ディーニュへ浮き球のスルーパスを出した。しかし、その後ディーニュのクロスは相手ディフェンスにカットされ、この日最大のチャンスを逃してしまった。バルセロナは最後までゴール狙い続けたが、結局1点も奪うことはできなかった。
しかし、その一方で失点を0にできたことはポジティブに捉えていいだろう。前半はラキティッチとブスケツが、後半はパウリーニョとブスケツがビルドアップの段階からカウンターに備えたポジショニングを取り、相手の速攻を阻止。ピケとウンティティの両センターバックの読みも鋭く、押し込まれても両サイドハーフと共に4-4のブロックを形成するメカニズムが機能していた。
最終的に、試合は0-0のスコアレスドローに終わった。得点が取れなかった部分では、確かにエースの不在が大きく影響した。しかし、注目すべきは他にある。それは、今のバルセロナがユベントス相手にも、守備とのバランスを考慮したポジショニングをしながら、以前よりもボール保持に磨きをかけた戦いができる、安定感のあるチームになりつつあることだ。
(文:長坂祐樹)
【了】