ロティーナ監督に鍛えられた守備戦術の真価発揮
さらに橋本のさりげない行動もチームを助けた。「今年はだいたいハシさんが入ってきた時に、『ピッチ内ではどんな感じ?』というのを聞いてくれたり、外から聞いてきたことを言ってくれる」と内田は明かす。
徳島戦、橋本が投入されたのは71分のこと。そこで整理したのは前線のドゥグラス・ヴィエイラとアラン・ピニェイロがファーストディフェンダーとしてどこにプレッシャーをかけ、どうやって相手の選択肢を奪うか。これは見事に効果を発揮し、終盤は徳島のボール回しのペースが落ち、東京Vがいい形でボールを奪える場面が増えた。
「相手がサイドをえぐれそうな時もすぐに(クロスを)上げてくれたりとか、もうちょっと余裕を持って崩しにかかってもいいんじゃないかなと。思ったよりそこは焦ってくれた感じはあった」
ベンチから戦況を見ていた橋本の冷静な分析により、相手をあえてサイドに誘導して焦らせた。それに呼応するようにチーム全体が共通認識を持って動けたのはミゲル・アンヘル・ロティーナ監督の下で鍛えられた守備のおかげでもある。
「(ロティーナ監督の指導で)みんなで戦うことがすごくキッチリ整理された。守備の時に1人で行くのではなくて、みんなが連動していくというところだったり、攻撃もそうですけど、ある程度システマチックに動いている部分は僕らは多いと思う。もしかしたら今まで自由にやっていたのが、ある程度制限はあるかもしれないですけど、連動した動きになることで精度が上がったのかもしれないですね。
基本的に選択肢をいろいろ提案して、その中から僕たちが選ぶという形はあるので、その選んだ時に、他の選手が何を選んだか、選んだことで次の選択肢はどうしたらいいかというのを、周りが理解しやすい環境は作っている。今までのチームだと、どうしても個の判断で連動して繋がっていくものがあった。それだと成熟に時間がかかるかもしれないですけど、逆にそれをシステマチックにやることで、成熟までの時間を短くできた部分もあると思います」
守備の動きが整理されたと、東京Vの他の選手たちも口を揃える。たとえ苦境に立たされても、橋本のようなベテランが途中出場でバランスを整え、状況に応じてアプローチを変えながら、組織で守る。J2最高クラスの攻撃力を誇る徳島の猛攻を1点に抑えられた要因が、そこにはあった。