強化費=戦力という昨今の図式の中で、例外ともいえる活躍
今季のJ2最終節、アウェイの群馬戦で見せた長崎の戦いぶりは、DF乾大知、FWファンマ、MF幸野志有人が欠場し、MF島田譲もベンチに温存と4名も主力を欠きながらも「いつも通り」のものだった。
伝統のハードワークや攻守切り替えの早さをベースに、攻撃では縦の早さと自分たちでボールを動かしていくスタイルを使い分け、守備においても球際の強さやハイプレッシャーを軸にピンチの芽を摘む。
中でもDF田代真一のクロスからFW平松宗の決めた先制点と、その平松が落としたボールからMF吉岡雅和が2点目を決めたシーンは、「いつもトレーニングでやっていた(平松)」形であり、それを出場機会の少ない選手たちが決めたという事実からも、チームの熟成度を感じることはできた。
スコアを4-0としてから、MF前田悠佑、澤田崇といった主力をさらに下げたことで、終了間際に1点を返されはしたが、記者席から「実力が段違いだ」という声が聞かれるほど、長崎のチーム力は際立っていた。
この試合の勝利で長崎は、今季の目標勝点とした勝点80に到達し、3位につけていた名古屋につけた勝点差は5。終わってみれば、余裕すら漂わせてのJ1昇格である。これを「快挙」と称することに異論のある者は少ないだろう。
昨季の主力を含む16名もの選手が入れ替わったトップチームの今季人件費は、開幕時点で3億にも及ばない。この額は過去にJ1昇格を達成したクラブはおろか、今季J1昇格を争ったクラブの中でもダントツに低いもので「今後、同程度の強化費でJ1昇格を達成するクラブはない」と評する関係者も多い。強化費=戦力という昨今の図式の中で、例外ともいえる活躍を見せたのが今季の長崎だったのである。