型を守り型から離れる。指示とは違う判断をする余裕が
第40節はホームに戻って町田ゼルビアに2-1、これで5連勝。第41節の名古屋グランパス戦では今季最高のプレーを披露している。
名古屋はそれまでの相手とは違っていた。ロングボールはあまり使わないし、引かれたら崩せないチームでもない。ただ、千葉にとっては相性の悪い相手ではなかった。第3節にホームで対戦したときは2-0で快勝している。
パスをつないでくるのでハイプレスがはまりやすい。ハイプレスが空転すれば大崩れの危険もあるが、真っ向から攻め合って敗れるなら仕方がないというのがエスナイデル監督の考え方である。名古屋ほど気持ち良く戦える相手はないのだ。
二度目の対戦は3-0、圧勝だった。名古屋のパスワークを自陣からプレスで押し返し、GKへバックパスさせるなど、高いインテンシティで名古屋のテクニックを押しつぶしている。
為田大貴のドリブル、ラリベイの高さ、船山や町田也真人の速さなど、個の攻撃力も存分に発揮した。エスナイデル監督が感動のあまり試合中に泣くほどのパフォーマンスを見せつける。
ホームでの最終戦、プレーオフ出場の可能性は小さかった。試合も開始早々にオウンゴールで横浜FCにリードを許してしまう。しかし千葉には勢いがあった。
前半に1点を返すと猛攻を続け、ロスタイムにCKから近藤直也のヘディングシュートで2-1と勝利をもぎとる。他会場では松本山雅が敗れ、東京ヴェルディと徳島ヴォルティスの試合に決着がつくという幸運が重なってプレーオフへ滑り込むことができた。
「チームは私の要求にほぼ応えているし、私の言うことだけをやっているわけではない」(エスナイデル監督)
奇抜な戦術を自分たちのモノにした選手たちには、監督の指示とは違う判断をする余裕が生まれていた。ときに監督を無視する。それは監督自身が望んでいたことだ。時間はかかったがチームは次のステージへ進化していた。
(取材・文:西部謙司)
【了】