リカルド・ロドリゲス監督が就任し、進化したヴォルティス
渡が決めた23ゴールのうち、ペナルティーエリアの外から決めたのはひとつだけ。相手ゴール前で異能と呼んでもいい嗅覚を発揮しながら、泥臭いゴールを積み重ねてきた。
右利きだが左足でも5ゴールを決め、頭で決めた8ゴールのなかには、大分トリニータとの前節の後半終了間際に叩き込んで勝利を手繰り寄せた、起死回生のダイビングヘッドも含まれている。
「でも、決勝ゴールというのは少ないんです。そこが本当に弱いところだと思っていて……」
ヴォルティスを勝利に導いた、いわゆる決勝点は6つ。同点に追いつき、勝ち点1をもたらしたゴールも5つを数える。前半戦を終えた段階で、それまでの昨シーズンの12ゴールを超える14ゴールを量産し、キャリアハイを更新しても常にさらに上を目指してきた。
「チームの勝利が一番の優先順位なので。自分のなかでいろいろと試合に対する基準があって、そこに対していつもアプローチとインセンティブをしているので。僕個人というよりもチームをいかにして勝たせるか、というのはずっと僕のなかにあるので。だからこそ、今日は悔しいだけです」
渡自身にとっては、J1昇格プレーオフ進出を逃すのは3度目になる。広島皆実高校から2012シーズンにギラヴァンツ北九州へ加入。柱谷幸一監督に率いられた2014シーズンには、チームは5位に食い込む大健闘を演じた。
しかし、ギラヴァンツがJ1ライセンスをもっていなかったために、規定によってプレーオフそのものの出場がかなわなかった。状況が改善されないまま臨んだ翌2015シーズンを7位で終えたところへ届いたのが、ヴォルティスからの完全移籍のオファーだった。
「どんなかたちでも上へ行ける自信はあったけど、そのなかで徳島が僕を拾ってくれた。何をもっていいサッカーと呼ぶのかはわからないけど、今年は見ている人もやっている僕たちもすごく充実したサッカーができたと思ったので、それに対して(J1昇格プレーオフへ)行けなかったがすごく悔しい」
スペイン人のロドリゲス監督を迎えた今シーズン。ボールをしっかりつなぐスタイルを標榜したヴォルティスは、前線により多くの選手を配置するシステムを採用したことと相まって、相手ゴール前におけるチャンスが飛躍的に増えた。
総得点71は、名古屋グランパスの85に次ぐリーグ2位。ロドリゲス体制下で急成長を遂げ、その約3分の1を叩き出す存在になっても、渡は決して満足していない。ゴールを決めた試合で負けたのは、ヴェルディ戦が今シーズンで2度目だったにもかかわらず、だ。
「もともと勝ち切れる試合で、僕が点を取っていなかったので。今シーズンずっと言っていることですけど、勝ち切れるフォワードになれなかった。そこは本当にチームに対して申し訳なくて。結果として20ゴールは超えましたけど、その倍以上は外しているので」