最終節、試合終了間際に激変した展開
ベンチの前でぼう然と立ち尽くすしかなかった。リザーブの選手たちの表情を見ただけで、志半ばで夢が散ったことがわかった。徳島ヴォルティスのFW渡大生は、涙をこらえながら自らを責めた。
「すごく責任を感じています。1点目を取ってから、2点目を取れるチャンスが僕にあったので。そこで決めきれないのがいまの僕の実力。チームに最後まで迷惑をかけた、というのが率直な思いです」
4分間が表示された後半のアディショナルタイムに突入した直後から、タッチライン際でリザーブ組が大きなジェスチャーを見せ始めた。誰もが両手を大きく振りながら、前へ、前へと伝えている。
直前の後半43分に、左コーナーキックから生まれた混戦のなかで、東京ヴェルディのMF内田達也に勝ち越しゴールを押し込まれた。もっとも、この時点ではJ1昇格プレーオフに進出できる可能性をまだ残していた。
全11会場で午後4時にキックオフされた19日の明治安田生命J2リーグ最終節。すでに湘南ベルマーレとV・ファーレン長崎がJ1への自動昇格を果たし、4チームがトーナメント形式で残り1枠を争うJ1昇格プレーオフへも、名古屋グランパスとアビスパ福岡がすでに進出を決めていた。
残るは2枠。試合開始前の時点でヴォルティスとヴェルディが勝ち点67で並び、得失点差で前者が5位につけていた。両チームを勝ち点1ポイント差で松本山雅FCが、さらに1ポイント差でジェフユナイテッド千葉が追う展開で90分間は進んでいった。
ベンチには京都サンガにリードを許していた松本と、横浜FCからなかなか勝ち越し点を奪えなかったジェフの戦況がリアルタイムで伝えられていた。このまま終われば、順位こそ6位にひとつ落とすものの、2013シーズン以来となるJ1昇格プレーオフ進出を決められる。
しかし、サッカーは時として信じられないようなドラマを生み出す。後半アディショナルタイムに入り、ジェフのキャプテン、DF近藤直也が起死回生の勝ち越し弾を頭で突き刺した。