11月1日にプロ契約が発表された平川怜と久保建英
今シーズン中のJ1出場が確実視されていた平川怜と久保建英がプロ契約を発表したのはU-17ワールドカップ後の11月1日。発表当日はFC東京U-18の練習に参加、3日のベストアメニティスタジアムにおけるJユースカップ準々決勝に出場したあと、翌日は2種登録選手のユース組+ジャキットと20分間ほどのトレーニングをしたのみですぐ大阪へと出発、5日は市立吹田サッカースタジアムでガンバ大阪U-23とJ3第30節を戦ったため、本格的なトップチームへの合流は翌週からだった。
同じ時期に同じ路を歩んだふたりのうち、平川が先にJ1へのGOサインを点灯させた。11日のJ3第31節で藤枝MYFCを相手に中盤を制圧、橋本拳人からのパスをゴールに突き刺してチームを勝利に導いたことで、評価がさらに高まったのだ。
しかし11月16日の練習後、取材に応じた平川は「いまJ1のメンバーに入るとは少々考えにくい」と発言。忍び寄るデビューの気配に気づいていなかった。
翌17日、トップチームの鳥栖遠征メンバーに選ばれた平川には旅の備えがなく、スーツを借りてJ1デビュー戦行きのバスに乗った。「緊張しています」と言う平川を、安間貴義監督は高く評価していた。ふくらはぎのハリを訴えて一時離脱した髙萩洋次郎がいない中盤で必要になると思ったから──というのが、安間監督が平川をメンバーに含めた理由だった。
ここまでわずか二週間半。あっという間の出来事だった。
もともと2種登録でJ3の公式戦に出場し始めたときから、プレーメーカー、パッサーとして即効性のある平川のJ1デビューを待望する声は多かった。両サイドの奥深くを衝くパスによる大きな展開には魅力がある。
だが、いまでこそ平川を高く評価している安間監督は、かつては慎重な立場をとっていた。高校生の段階でもいいパスを配球できる選手は、過去にもFC東京の下部組織から出現してきている。その力に加えて、相手にとって脅威となる何かを持つことができるか否かが問題だった。
パスを出すだけなら怖さはない。ワンツーでの突破にしろ、ドリブルにしろ、ミドルシュートにしろ、攻め上がってワンタッチでのシュートにしろ、ゴールに絡む動きがなければ、対戦相手はいやがってくれない。