どこから手をつけていくか道筋をつける必要性
風間監督はボールを運ぶだけでなく、相手の最終ラインを身体能力に依存せずに突破する「外す」という見通しを持っている。だからポゼッションを70%以上に高めれば、失点は抑えられるうえにチャンスの数で圧倒的できるので、強豪国にも勝つチャンスがあるとみている。
ポゼッション能力はすでに長所なので、あと20~30%の上乗せも可能だろうというわけだ。強豪相手に70%以上は高いハードルとはいえ、日本の長所なので他の分野よりも実現の可能性という意味では高い。
70%以上のボール支配力で押し込み、風間理論の「外す」でチャンスを作って点をとる。カウンターから1点、2点は失うかもしれないが、2点以上とれれば強豪国にも負けない。これは1つのシナリオだ。
ほかにも例えば、イビチャ・オシム監督が描いていたような乱戦型のアプローチも格上を食うのに向いている。岡田武史監督が率いて2009年にオランダと対戦したときに0-3で完敗しているが、60分間はアグレッシブな攻守で日本が優勢だった。あれをあと30分間続けられる体力があれば強豪を倒せるかもしれない。
シナリオは1つではない。ただし、いずれにしても明確に描かれていなければならない。強豪国とは力の差があり、ブラジルとは対戦するたびに痛感させられている。だからこそ、どこから手をつけていくか道筋をつける必要があるわけだ。
(取材・文:西部謙司)
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