相手の強みを消したインテル。試合は指揮官の見立て通りに
「明日はアタランタと当たるが、彼らはセットプレーでの失点が少ない一方でゴールはどこよりも決める。バスケットボールの選手のような体格をした連中が揃って、しかも足元も上手いときている。プレースキックでは、体格面で劣るとピンチになる。30cmくらい身長差があるところにボールを放り込まれるとやっぱり厳しいからだ。プレースキックは我われのカンピオナート(セリエAのこと)は頻繁にあることであり、これは考慮に入れなければならない」
18日、インテルのルチャーノ・スパレッティ監督はアタランタ戦の前日記者会見において重要な戦略ポイントをポロッとこぼしていた。「いつダウベルトを使うのか」という地元記者からの質問を受け、セットプレー時の競り合いにも強みを発揮するという理由で「長友佑都やジョアン(カンセロの他にダビデ・サントンもいる」と語った流れでの発言だった。
事実、昨季のアタランタはプレースキックに滅法強かった。アレハンドロ・ゴメスという素晴らしいキッカーがいることと同時に、受け手となる選手も長身揃いだ。しかも彼らは戦術に基づいて細かい動きでマークを外し、ボールに喰らいつく。守備では逆にマンマークをベースに相手の各選手に貼り付き、空中線で相手のプレースキックを弾き返す。全得点のうちプレースキックでの比率は35%を超え、DFによるゴールが18得点に登ったのも一つの表れだ(ちなみに5大リーグで最多の数字)。
かくして19日、発表されたスタメンの中には長友でもダウベルトでもなく、そのサントンが起用された。前日の発言に従えばセットプレー対策、ということになるわけだが、試合の流れはスパレッティ監督の見立て通りになった。サントンが直接得点に関わったわけではなかったが、セットプレーはまさに肉弾戦の末に膠着した試合を動かすきっかけとなった。
ボールホルダーに厳しく行くと同時に、その周囲の選手にもマンマーク気味に張り付いてパスコースを潰すのがアタランタの組織守備だ。その彼らと対峙し、当たりの厳しいサッカーを仕掛けられた結果、前半のインテルはなかなかシュートまでの形を作ることができなかった。そんな展開で後半に入り、51分に右FKを獲得する。インテルはこれを活かした。
ペナルティエリア内には5人、ただいずれもゴールエリアの外に構える。アントニオ・カンドレーバが蹴り出す直前、1人はファーサイドに構える一方、3人がニアサイドに走ってマーカーを釣る。そして中央のスペースを開け、そこにマウロ・イカルディが飛び込むという格好だ。
キックの際、イカルディには188cmの長身MFブライアン・クリスタンテが貼り付いた。マークを外そうとするイカルディの動きに付いて来るが、そこにミラン・シュクリニアルがスクリーンを掛けてクリスタンテを遠ざける。この一瞬の隙を逃さず、イカルディはボールの落下点に飛び込んでフリーでヘディングシュートを放った。これで主導権を手にしたインテルは、9分後にもイカルディの頭であっさり追加点を挙げている。セットプレーをものにしたことは、試合の流れを引き寄せる上で非常に重要なことだった。