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Jリーグ 7年前

川崎Fの執念。失意のルヴァン杯決勝からの復活。奇跡への序章になることを信じて

text by 藤江直人 photo by Getty Images

この90分間が奇跡への序章となることを信じて

残り2節。中村憲剛は「僕たちはとにかくいい準備をし続けるだけ」と語った
残り2節。中村憲剛は「僕たちはとにかくいい準備をし続けるだけ」と語った【写真:Getty Images】

 まさに自発的に、選手がそれぞれの意思で上を向いたと振り返った中村は、J1戦線においてフロンターレが置かれた断崖絶壁の状況も追い風になったとつけ加えた。

「ましてや自分たちが負けたら終わりということが、また痺れるゲームになったというか。そういう状況でまた戦えることへ、頭のなかを切り替えられたこともすごく大きかった」

 すでに優勝争いは、首位と快走するアントラーズと2位のフロンターレに絞られていた。そして、浦和レッズがAFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝に進出した関係で、1試合だけ前倒しされて5日に行われた第32節で、アントラーズがレッズを下していた。

 この時点で両チームの勝ち点差は7ポイントに開いていた。つまり、フロンターレがガンバに負けた時点で雌雄は決し、アントラーズが2年連続9度目のJ1王者に輝く。黒星を喫した時点で9度目の“2位”が決まる状況は、トーナメント戦でいうファイナルに等しかった。

「サッカーで味わわされた悔しさというのは、やっぱりサッカーでしか晴らせない。その意味ではまだ晴らせてはいないんですけど、今日負けていたら終わりだったので、その意味では最後までぶれずに続けた結果として、次の話ができるようになったのはよかったと思う。

 鹿島の試合が先にありますけど、少しでもプレッシャーがかかっていると思うし、だからこそ勝ち点差が『7』だったのを『4』に縮められたことは小さくない。それを鹿島がどう思うかというのは、また彼らの問題なので、僕たちはとにかくいい準備をし続けるだけです」

 ACL決勝との兼ね合いで、レッズと対戦するフロンターレの次節は29日に1試合だけ開催される。その前の26日にアントラーズが柏レイソルに勝てば連覇が決まるが、ここまできたら余計なことはいっさい考えない。

 ホームでサポーターの声援に応えたい思いと、後がない絶体絶命の状況がメンタルを雄々しく蘇らせ、そこへ百戦錬磨の大黒柱、中村の閃きが加わって手にした価値ある勝利。ガンバを圧倒した90分間が奇跡への序章となることを信じて、フロンターレは人事を尽くして天命を待ち続ける。

(取材・文:藤江直人)

【了】

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