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Jリーグ 7年前

川崎Fの執念。失意のルヴァン杯決勝からの復活。奇跡への序章になることを信じて

text by 藤江直人 photo by Getty Images

攻守ともにガンバを圧倒。シュート数は25本対1本

「あの2人が何で中にいたのか、よくわからないですけど。あれっ、という感じだったんですけど…ごめんなさい、今日は中に入るはずだったんだ」

 コーナーキックの際の約束事を一瞬ながら忘れていた中村が、思わず苦笑いするほどの劇的な光景。利き足とは逆の左足を振り抜いたエウシーニョのシュートが、それまでファインセーブを連発していた東口の股間を、ワンバウンドして抜けていく。

「結果として股を抜けていったので、(自分にとって)ノーチャンスではなかったと思うんですけど。でも、(得点が)入るパターンなのかな」

 中村にファーサイドを狙われたことで、ガンバの守備全体が翻弄されたことを東口も認めるしかなかった。必死にカバーに走ってきた三浦が伸ばした右足の先をかすめるようにして、勝負に決着をつける一撃がゴールへ吸い込まれていった。

 冷たい雨が間断なく降り続くなかで行われた、18日の明治安田生命J1リーグ第32節。スコアこそ1‐0だったが、内容ではフロンターレがガンバを、たとえるならばハーフコートゲームを行っているのかと見間違えるほど、攻守両面にわたって文字通り圧倒し続けた。

 シュート数はフロンターレの25本に対して、ガンバはわずか1本。もちろん、決定機には至っていない。翻ってフロンターレは、獅子奮迅のパフォーマンスを演じた東口がいなかったら、前半の段階で大量点を奪って勝負を決めていてもおかしくなかった。

 前半14分にMF大島僚太からの浮き球のスルーパスにフリーで抜け出すも、ボレーシュートをバーの上へ浮かせてしまった中村が「試合を難しくしたのは、自分も含めて決定機を外したから」と自戒しながら、それでもネガティブな思考回路とは無縁だったと胸を張った。

「それよりも自分たちが等々力のピッチで、攻守で相手を圧倒しようという意識のほうが強かった。勝ったから言えることですけど、でも負けたらどうしようと思っている選手は、今日は誰もいなかったと思います。その意味では、(シュート数などの)数字が表す通りの試合ができたかな。

 自分たちで首をしめた感じですけど、ヒガシのファインセーブにしても、逆に言えばそこまで自分たちがもっていっているということでもあるので。いつかゴールが入るだろうと楽観視はしていませんでしたけど、このまま愚直に続けていけば、十分に点が取れるという思いはありました」

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