欧州の他国にも認められつつあるイングランドの育成改革の行く末は…
また今後は、今夏サンチョがシティからドルトムントへと移籍したように、海外や中堅クラブに出ていって露出度を高めようとする選手も増えていくだろう。加えていえば、前述したとおり、少なくともトッテナムのマウリシオ・ポチェッティーノ監督とリバプールのユルゲン・クロップ監督は若い選手の力を信じているし、積極的に活用している。そこにユース世代の成功もあり、これは確実に追い風だ。
イングランド戦の前に、ドイツ代表のチームマネージャーを務めるオリバー・ビアホフは「セント・ジョージズ・パークと巨額の投資、優秀なコーチとサッカー教育。イングランドは確実に追いついてきている。時間はかかるものだ。我々の場合は10年間。2000年に始めて、最初に結果として表れたのは2010年のことだった」と話していた。
元イタリア代表監督で現在チェルシーの指揮を執るアントニオ・コンテも、「イングランドサッカーは急激に伸びている。今後イングランド代表は、負かすのが厳しいチームになるはずだ。こういった動きがあるときは、将来大きなことをやる可能性が高くなる。次のW杯かもしれない」と、自身のクラブにいる若手の実力を認めている。
自国リーグの成功が、逆に代表の低迷に貢献するという皮肉な結果になってきたわけだが、果たして、今年のヤングライオンズ(イングランドユース代表の通称)の活躍が、今後のプレミアリーグ、さらにはイングランドのA代表に変化をもたらすのか。
もしかしたら(希望的観測ではあるのは百も承知だが)、51年間遠ざかっているW杯トロフィーとの再会も、案外遠い未来のことではないのかもしれない。
(取材・文:松澤浩三【イングランド】)
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