ユース世代を知るA代表監督の存在意義
リバプールのレジェンドにして元イングランド代表、現在解説者のジェイミー・キャラガーも、『デイリー・テレグラフ』紙の自身のコラムで次のように話している。
「問題は、マンチェスター・シティやチェルシーがこういった選手を起用するかどうかだ。U-17W杯で優勝したレギュラーのうち、7人がこの2つのクラブに所属している。両クラブは湯水のごとくアカデミーに投資をしたが、何のためか? 監督はプレミアリーグやチャンピオンズリーグ(CL)での成功を求められているため、優秀とはいえ若い選手は無視して、高くて経験値のある選手を連れてくる」
実際に、先日のA代表の親善試合で活躍したロフタス=チークやタミー・アブラハムはチェルシーからレンタル移籍に出されており、今季はそれぞれクリスタル・パレスとスウォンジーでプレータイムを得てイングランド代表に招集された。またU-20代表のソランケは出場機会を求めて、今季チェルシーからリバプールへ完全移籍している。
現時点では、リーグ内のトップチームで若手に出場機会を与えているのはトットナムとリバプールくらいだろうか。加えて、ウェストハムやサウサンプトンといったユース育成に長けていて、伝統的に自前の若手を起用してきた中堅クラブでさえも、最近ではそういった傾向が薄まっているほどである。
それでは、彼らユース年代の選手の前には絶望だけが待っているのか。トッテナムとアストン・ヴィラで監督を務め、前者ではU-21チームを率いたこともあるティム・シャーウッドはそうではないと語る。
「現在のプレミアリーグの監督にかかる重圧は半端ではないから、リスクの大きい若手を起用できる機会は必然的に少なくなる」と説明した一方で、「ただ、今回ガレス(サウスゲイト監督)がやったように、プレミアリーグで数試合しか出ていなくてもA代表に抜擢するという方法もある。ドイツのレロイ・ザネやブラジルのガブリエル・ジェズスだって、クラブでの出場試合数があまりないのにA代表に選ばれた。そこから逆にクラブに戻って出場機会が増える可能性もあるんだ。U-21代表を見てきたガレスだからこそ、それができる」と、逆説的な捉え方もできるとしている。