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本田圭佑 7年前

本田圭佑、確立した自分だけの「右サイド像」。信頼つかんだ前期から収穫のW杯イヤーへ

text by 河治良幸 photo by Getty Images

訪れた転機。作り上げた「本田なりのスタイル」

本田圭佑
信頼を勝ち取った本田圭佑【写真:Getty Images】

 その間、最終予選を突破した日本代表の最初の強化試合となる10月2試合のメンバーから外れる経験もした本田。パチューカでの転機は10月25日のコパMX決勝トーナメント1回戦サカテペク戦だった。右サイドで先発した本田は右から中に切れ込む仕掛けで豪快な左足シュートを決めると、味方のスルーパスに抜け出し、GKとの1対1を制して鮮やかに2点目をあげたのだ。さらに本田を起点とした追加点などで5-0と大勝した。

 その4日後の第15節サントス・ラグーナ戦では前線の見事なコンビネーションに絡み、3人目の動きから左足の技ありシュートでファーサイドのネットを揺らし、リーグ戦での3得点目をあげた。もともとは10番を付けるウルグアイ代表MFのホナタン・ウレタビスカヤが高い突破力をベースにチャンスを作るためのポジションだった右サイドだが、なかなか得点が伸びない事情もあり、ディエゴ・アロンソ監督は右利きのウレタビスカヤを左に回し、左利きの本田をこのポジションで起用したことが成果を出した。

 ポジションはミランと同じだが、本田自身がゴール前で絡みやすい戦術的なベースがあること、決め手のあるFWがおらず、グスマンや本田の得点力に期待せざるをえないチーム事情も本田のゴールチャンスを増やす要因となっている。戦術的なベースと言うのは中盤の三枚、主に[4-3-3]の逆三角形を作るホルヘ・エルナンデス、エリック・グティエレス、グスマンが起点となり、左右のサイドに良い形で仕掛けさせる状況を作り出していることだ。

 従来はそこからウレタビスカヤや左サイドを本職とするエドソン・プッチなどがドリブルで仕掛け、シュートやクロスに持ち込むというシンプルなプレーがメインだったが、なかなか相手のディフェンスを打開できなかった。本田が右サイドに入ったことで、中盤の3枚にうまく絡みながらコンビネーションを織り交ぜるなど変化がうまれており、縦に仕掛けるだけでなく、中よりの位置でタメを作れる本田は右サイドバックの攻め上がりも引き出す効果を生んでいる。

 つまりは右サイドにいながら、もともと本田がインサイドに求めていた様なプレーをできているということ。結局ポジションというのはチームのメカニズムで向き不向きも変わりうる。少なくともパチューカでは終盤戦で本田なりの“右サイド像”を作り上げたということだ。ここから11月22日にコパMXの準決勝、勝ち上がれば決勝を戦い、そこから12月のクラブW杯へと向かう。

 12月に国内組で臨む東アジアE-1選手権に参加できない本田にとって日本代表に復帰するチャンスは海外での2試合が見込まれる来年3月となり、あとは5月のW杯最終メンバー発表を待つばかりとなる。現状では日本代表でもインサイドで勝負することは難しいかもしれない。そうなると右サイドでいかに本田の持ち味を生かしやすい状況を作り、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督のアピールできるか。

 中盤で細かくボールを回す基本スタイルへの転換は考えにくいが、速い攻撃の中でも本田が起点として絡み、そこからコンビネーションでゴールを目指せる形で結果につなげられれば現在の久保裕也や浅野拓磨と異なる強みを発揮でき、酒井宏樹との相性も生かしやすくなる。まずはクラブでの大舞台で存在感を示し、W杯イヤーに良い流れを持ち込みたい。

(文:河治良幸)

【了】

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