Cロナウドのシンプルな意見がもつ説得力
このような背景がありながら、人種的なことを理由にベンゼマを排除しようというのはナンセンスな話なのだが、メディアやファンの間には、ただの選手の好き嫌いといった好みの枠を超えた強力な「アンチ・ベンゼマ派」がいる。
また、日常的にテロの恐怖にさらされている欧州では、イスラムの人たちへの偏見が以前より格段に強くなっているのも事実だ。
2時間ほどのベンゼマのドキュメンタリーでは、家族や友人を大切にし、愛娘にはメロメロの、ベンゼマの飾らない日常が描かれていた。
ジネディーヌ・ジダンやクリスティアーノ・ロナウド、カルロ・アンチェロッティ、ティエリ・アンリ、サミール・ナスリ、ベンゼマの幼馴じみら、多くの知人・友人もコメントを寄せていた。
中でもロナウドが言った「世界最高峰のサッカーイベントであるW杯には、世界のトッププレーヤーが集結するべき。だからカリムにはぜひあの場所にいてほしい」というシンプルな意見は妙に説得力があった。
正直なところ、ベンゼマはセックステープ事件の前も、フランス代表でそこまで活躍していた、という印象はなかったから、彼が呼ばれなくなった後、「いなくてもいいのかも」と感じたこともあった。
しかし思い起こせば、2014年のW杯の初戦、ホンジュラス戦で貴重な先制点を挙げたのは彼だった。その後もレアルでキャリアを積み上げ、ストライカーとしてメンタル的にも技術的にもさらに大きく成長している。
絶対的なリーダーや、チャンピオンズリーグのようなビッグコンペティションでの優勝経験が乏しい現メンバーにとって、ベンゼマは、W杯という異次元の舞台において、選手たちが精神的にも頼りにできる存在になるだろう。
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