帰ってきた主将のハットトリック。豪州は4大会連続のW杯へ
そんな試合の流れを断ち切ったのは、このプレーオフに万全で復帰、1戦目でも十分な存在感を発揮したキャプテンのジェディナクだった。53分、相手のファウルで得たフリーキック。誰もがムーイのものと思ったボールを右足で蹴ると、壁の相手DFに当たって微妙にコースが変わってからゴールに突き刺さった。
寡黙なキャプテンの大きなガッツポーズに歓喜の輪ができて、豪州待望の先制点。72分にはPKをジェディナクが冷静に決めて突き放すと、ホンジュラスの選手に焦りの色が見えてくる。85分には、またしてもPKをジェディナクがゴールに沈めてハットトリック。ホンジュラスの息の根を止めた。結局、終了前に何とか1点を返すのが精いっぱいのホンジュラスを3-1で破ったサッカルーズは4大会連続となるW杯出場を決めた。
シリアとのプレーオフのケーヒルに続き、今回の大陸間プレーオフでは同じくベテランのジェディナクが、本物の“ジェダイの騎士”顔負けの獅子奮迅の活躍を見せての勝利。この2人にミリガンを加えた3人のベテランを、ポスタコグルーは世代交代を進める中でも変わらぬ信頼をもって遇してきた。今回のW杯出場という結果は、その起用に応えたこの3人のベテランの献身があって導き出されたものだ。そこは、ポスタコグルー監督の采配と併せて、きちんと顕彰されなければならない。
歓喜の輪が広がり、満員のファンとも喜びを分かち合う選手たち。そんな光景を見ながら、ふと思った。
「この試合が、アンジの最後の試合なのかな…」
選手を代表して守護神のマット・ライアンは「(ポスタコグルー)監督のいないW杯なんて考えられない」とメディアに訴えた。オーストラリアサッカー連盟(FFA)のデービッド・ギャロップCEOも「アンジ(・ポスタコグルー監督)にロシアW杯を指揮してもらえると信じているし、そうなるようにできることは何でもする」と公言する。筆者も同じ気持ちだ。
ポスタコグルー監督は、今回のW杯最終予選の道のりを「今までで最もタフな仕事で、それをやってのけた」と、まずは自らの達成した大きなタスクを振り返って、「(進退に関しては)早い段階でFFAとも話をして、今月(11月)中にははっきりさせたい」と語っている。12月1日に行われるロシアW杯の組み合わせ抽選会にポスタコグルー監督の姿はあるのかーーしばらくは、彼の動向から目が離せない。
(取材・文:植松久隆【オーストラリア】)
【了】
★W杯予選まとめはこちら★