誰もが待ち望んだ「ジェダイの帰還」
キャプテンの復帰を、某紙は「the return of ″Jedi“nak(ジェダイの帰還)」と伝えた。見事な髭を蓄えた哲学者然とした風貌、常に冷静沈着なキャラクターもあいまって、このキャプテンは、時にその苗字の一部をもじってサッカルーズのジェダイ(Jedi、映画『スターウォーズ』の世界の中で活躍する特殊能力を持った騎士の総称)となぞらえられる。ポスタコグルー監督の下でずっと中盤の底に君臨してきた彼は、まさに、現体制を象徴する存在だ。
ここに、その存在の不可欠さを示すデータを示す。2015年、豪州が優勝したアジアカップ以降の代表戦で、ジェディナクは19試合に出場、成績は12勝6分1敗で勝率63%。負けはわずか1試合しかない。
一方、キャプテン不在の試合は16試合で7勝3分6敗、勝率は43.8%まで落ちるだけでなく、負けの数は6試合に激増する。これらのデータからも彼の存在の大きさが見て取れる。W杯前最大の山場を前に、そんな頼れるキャプテンが戻ってきたことは、チームに大きなインスピレーションを与えたのだった。
そして迎えた大陸間プレーオフ第1戦。1トップには、ケガ明けで万全ではないケーヒルを温存、トミ・ユリッチが先発した。ジェディナクがしっかり中盤の要の位置を占め、そのやや前の左に司令塔アーロン・ムーイ、右にマッシモ・ルオンゴを配し、運動量が豊富で思い切りの良いジャクソン・アーバインをユリッチの下でセカンド・ストライカー的に据える、やや変則的な布陣を採った。
この試合、ホームの大観衆の前で気合いの乗っているはずのホンジュラスの動きが予想以上に悪く、結果的に豪州に有利に作用した審判の笛もあって、サッカルーズは終始優位に進められた。それでも、ユリッチが決定的なシュートを2度ほど外す詰めの甘さもあり、勝ちきれないままに試合はスコアレスドロー。
負けなかったものの、アウェイゴールの恩恵を得られなかったことで、ホームでの第2戦は是が非でも勝たなければいけない試合となった。それにしてもホンジュラスには全く怖さがなかった。とても激戦の北中米カリブ予選をここまで戦い抜いてきたと思えないクオリティで、そう考えれば豪州としては勝っておきたかった試合ではあったのだが。