勝利すれば初のプレーオフ進出が決定。引き分けなら他会場次第
梶川は第12節の横浜FC戦以来のフル出場。パスとドリブルを織り交ぜた、いつもの軽快なプレースタイルは欠片もなく、汗と泥にまみれながらボールを追い、必死にスペースを埋めた。
他方、梶川が昨季まで所属したV・ファーレン長崎は、カマタマーレ讃岐に3‐1で勝利し、2位以内が確定。初のJ1昇格を決めている。
「複雑な思いがまったくないかといえばうそになりますが、素直におめでとうと思えました。2点目の決勝点を決めたのは、苦労人のマエちゃん(前田悠佑)。ああいう選手が大事な試合で点を取るなら、それは上にいくよなと。長崎の選手のLINEグループがあって、そこでもマエちゃんのゴール話で盛り上がりましたね」
最終節の相手、徳島ヴォルティスとは開幕戦で当たり、東京Vは0‐1の敗戦を喫している。内容的にも相手に大きく上回られ、スコア以上の完敗だった。
「あのときは徳島の完成度のほうが上でした。自分たちにはブレずに貫き通してきたことがあり、何もさせてもらえなかった前回の対戦とは違う」
近年、チームの中核を担った中後が下支えする側に回り、東京Vでプロのキャリアを歩み始めた梶川は、湘南ベルマーレ、長崎で身につけた経験をチームに還元している。今季、新任のロティーナ監督が優れた仕事をしているのは事実だが、このように数年来の目に見えない積み重ねもある。
昇格プレーオフ出場の懸かった直接対決、運命の徳島戦は11月19日、味の素スタジアムで16時キックオフ。現在6位の東京Vは勝てば5位が確定し、初のプレーオフ進出が決まる。引き分け以下では、他会場の結果次第だ。
過ぐる日、幾度となく危機にさらされながら、粘り強く東京Vと歩んできた人々よ。これほどまでに屈することを拒絶し、へこたれず勝機を見出すチームがあったか。この物語にはきっと続きがある。
(取材・文:海江田哲朗)
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